2パターンのお客様にどちらにも満足を
コール氏はユーザーを2つのパターンに分類する。「まったく技術に詳しくなく、ボタンひとつですべてをやってくれることを望むタイプ」と「技術に詳しく、自分でチューニングしたいタイプ」だ。そのどちらの満足度も高めなければならない。
例えば前者(技術に詳しくないタイプ)の顧客は、トラブルの原因がセキュリティー製品にあると特定できなくても、「とにかくパソコンを直してほしい」とコールセンターに電話をかけてくる。そのためサポートには力を入れているという。
「たとえ当社の製品に原因がなくても、関係ないと一刀両断に切り捨ててはいけないと考えている。パソコンのおかしなところを、電話一本で見つけてさしあげられるようにしたい」
一方、ワイヤード(Wired)と呼ばれる技術に詳しい顧客には、「ノートンインキュベーター」という試みを始めている。今後製品になるかも知れない情報を先に試してもらう機能だ。
そして、どちらのタイプの顧客にも人気があるのが、PCチューンナップサービス(リモートでパソコンを快適に使うためのサポートを行なうサービス)と、オンラインバックアップ、IDセーフだ。サイトごとにIDやパスワードを覚えるのは大変だが、IDセーフならひとつのサイトからアクセスしたいサイトにアクセスでき、しかも個人情報の漏洩を防ぐという。
シマンテックは今後二つの方向に力を入れていく。一つはレピュテーション、つまり評判の向上だ。オンライン上のファイルやサイトの安全性に関する評判をユーザーに提供する。もうひとつは子供の安全を守るため、アクセス履歴や検索履歴、インスタントメッセージやSNSなどもチェックできるようにする方向性だ。
日本はケータイが特殊
ウイルスやネットワーク攻撃などの現状としては、世界的に見て大きなふたつのトレンドがあるという。
「正規のサイトをジャックしてブラウザーの脆弱性を狙うやり方のほか、人を騙して自主的にウイルスを受け入れさせるやり方(ソーシャルエンジニアリング攻撃)がある。スパイウェアの71%が、騙されて自分の意志でダウンロードされている。脅威のランドスケープは以前と変わってきている」
それでは、日本における状況はどうなのだろうか。
「まず日本語を使っている点がかなり独特。スパマー側にもまず日本語を理解しなければならないという壁がある。また、携帯電話の分野にも興味が惹かれる。ネットにアクセスするユーザーが多いし、SNSやブログを通じたテキスト交流も多い。おサイフケータイのように決済機能がある端末も他の国では例がない」
シマンテックはすでに、法人顧客向けに、モバイル(特にスマートフォン)のデータを守れる製品をリリースしている。「ウェブの危険性が携帯電話に及ばないようにすることが重要だ」
インターネットを安心して楽しむためには、セキュリティー製品の導入が必須だ。従来セキュリティーはユーザビリティーと相反するものととらえられてきたが、両立は可能なのだろうか? やや具体性にかける内容ではあったが、少なくともシマンテックがゼロインパクトを戦略として掲げてきたことは確かであり、それがどのような成果につながってくるかは期待したい。