このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

全国研究室探訪 第1回

秒速10kmのレーザーガンでディープインパクトを再現!

2008年06月30日 13時00分更新

文● 川口友万

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

クレーターを人工的に作り出す

松井研

海外からも視察に来るクレーターの実験装置

 松井研究室には世界でも珍しいクレーターを作る実験装置がある。密閉したシリンダーの底にガラス粒の砂を敷き詰め、そこに試料で作った弾丸を撃ち込む。すると

「クレーターができるわけですよ」と松井教授。

「高速カメラで詳細を撮影するわけだ。それを分析して、クレーターがどういうプロセスを経て作られるか、再現して調べるのがこの装置」

松井研

奥にある砂に弾丸が撃ち込まれる様子を観測する

松井研

この砂は、きちんとしたデータを出すために、一粒一粒がまったく同じ大きさ、同じ重さで作られている

松井研

このようにカメラでクレーターが生成される瞬間を収める

松井研

研究結果が貼り出されていた

 それらの装置を使い、新たな事実が分かったという。

「ユカタン半島のような隕石の衝突が起きると一酸化炭素や酸化した硫黄のガスがたくさん出ることがわかったんです。今の環境問題にもつながるんですが、ものすごい量の一酸化炭素が作用して最終的にオゾンの形になり、それが地球の温度を急激に上げたり、二酸化硫黄がたくさん出ると酸性雨が降ったりといったことが、地球規模で起きることがだんだんわかってきたんです」

松井研

実験装置でクレーターの生成される様子を高速度カメラで撮影したもの

 隕石の衝突を研究すると地球温暖化のことがわかるのである。つまり人間のやっていることは隕石なみということか。

 実験の映像を見せてもらった。弾丸が衝突すると最初はズドッと深く弾丸がめり込むが、すぐに盛り上がり、月の表面のような浅く広いクレーターの形に変わった。

「ぶつかった瞬間にはトランジェントクレーターといって、流動的なプロセスが残っている時には深さが直径に対して5:2だとかの深いクレーターができるけれども、最終的に直径が広がって行く過程で浅くなっていく。圧力が高いから流体と同じように振る舞うんだ」

 NHK「地球大紀行」をはじめテレビ出演は数限りなく、カール・セーガンと友達だったり、その縁でジョディ・フォスターが日本に来たときに会ったりと伝説の多い松井教授だが、今年で定年。宇宙と生命の謎に向き合う、寺田寅彦以来の正統なサイエンスを継いでいくのは松井研の若き博士たちである。

松井研

松井研究室の面々。みんな中学の時から星が好きで、夢は学者になることだった

松井研

松井教授を囲んで談笑中。しかし、話を聞くときのみんなの目は真剣だ

松井教授の後を継ぎ、世界の惑星科学を一手に引き受けるのは杉田精司氏。東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授の職にある


前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン