東大柏キャンパスにある松井研究室にお邪魔した
夏の夜空に見上げる星に、命あるものはいくつぐらいあるのだろうか? いかにして宇宙に生命が生まれたのかを探っているのが東京大学の松井研究室である。
「我々が興味を持っているのは衝突蒸気雲だ。隕石の衝突に伴って物質がガス化するわけ。そのガスの中でどんな物理化学的プロセスが進行するかに興味がある」
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授である松井教授は、現在、レーザーを使った衝突実験を行なっている。薄い金属箔(白金や金が使われる)を、レーザーを使って、瞬時に数十万度の超高温に加熱する。金属は瞬間的に蒸発する。その蒸発した金属ガスがロケットエンジンのように噴出し、金属箔は加速され標的に衝突する。その速度、実に秒速10km。つまり、超小型の隕石衝突を起こしているわけだ。
この衝突から何がわかるのでしょう?
「土星の衛星にタイタンってあるよね」
ありますね。
「その形成過程を普通に考えると、タイタンの大気はメタンとかアンモニアなんですよ。だけど、実際の大気は窒素なんだ。窒素の大気というのは不思議なわけ。窒素の大気がどうやって作られたのか、よくわからないわけね」
それに隕石が関係している?
「窒素の大気がどうやって生まれるかというと、衝突のプロセスが関与して最初はメタンやアンモニアだった大気が窒素の大気に変わるんじゃないか? という考え方があって、それを実験的に検証しようと」
壮大なスケールの話である。
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