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ノキアがSymbian OSを無料にしたワケ

2008年06月26日 18時14分更新

文● 西川仁朗/アスキーネタ帳編集部

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Symbian OSを採用した「Nokia N95」。ソフトバンクモバイルから「X02NK」として発売されている

Symbian OSを採用した「Nokia N95」。ソフトバンクモバイルから「X02NK」として発売されている

 フィンランドのノキアが、携帯電話向けOS「Symbian OS」を提供する英シンビアン社株式の100%取得を目指すことと、Symbian OSを無償で提供することをあわせて発表した。Symbian OSを搭載している携帯電話は230機種以上にわたり、累積出荷台数は2億600万台を超えている

 ノキアはNTTドコモや英ソニー・エリクソン、米モトローラ、韓国のサムスン電子といったキャリアや端末メーカー10社と共に2009年に非営利団体「Symbian Foundation」を設立し、Symbian OSだけでなく、ユーザーインターフェイスプラットフォームの「UIQ」や移動端末用ソフトウェアプラットフォームとしてNTTドコモが推進する「MOAP」なども無償で提供する。戦略としては、グーグルのモバイルプラットフォーム「Android」的アプローチへ舵を切った形だ。

矢野経済研究所 情報・通信産業本部 ICT産業調査室の上級研究員 賀川勝氏

矢野経済研究所 情報・通信産業本部 ICT産業調査室の上級研究員 賀川勝氏

 ノキアが無償提供に踏み切った背景を民間総合調査機関の矢野経済研究所 情報・通信産業本部 ICT産業調査室の上級研究員 賀川勝氏は「Androidの存在を脅威と感じているのでは」と指摘する。「Symbian OSはスマートフォンのOSのデファクトスタンダードを握っているとはいえ、ミドルウェアやインターフェイスを端末メーカー各社がバラバラで採用している。一方、Androidはミドルウェアやインターフェイスのプラットフォームを含んだオープンソースの開発環境として登場しており、広がりを見せている。携帯端末は今後ますます“Web接続機器”としての機能面が強化される傾向にあり、Webに関してグーグルのブランドは非常に強い。そういった意味でノキアはこれまでと同じ有償提供ではマーケットを拡大することが難しいと考えたのではないか」と賀川氏は述べる。

 一方、キャリア視点で見てみると「他キャリアとの競争激化により、ユーザーに支持される端末のラインナップを確保するために、キャリアは現在取引している端末メーカー以外との付き合いも考えざるを得なくなっている」と賀川氏は述べる。例えば、キャリアが従来採用していなかったメーカーの端末をラインナップに加えたくなった場合、OSを含めた開発環境が標準化されていたほうが望ましい。その際に、今後はSymbian OSの存在感がより強く浮き上がってくることになりそうだ。

 Android登場による激震は、数カ月経った現在も続いている。

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