500円市場の攻防はいかに
外食産業の市場規模は25兆円前後と巨大ではあるが、縮小傾向にある。その要因の1つが、景気低迷による支出の抑制だ。外食の回数は変わらないものの、1回の食事にかける金額は年々減少している。
これまでファストフードの主戦場である「昼食」に、すかいらーく傘下のSガストやエスバ(旧・Sバーミヤン)が進出し、カフェチェーン、弁当店などの“中食”も含めたクロスオーバーと競合が激化している。未だ景気回復の兆しが見えず財布の紐が固いままの状況を考えると、この激戦はまだ長引きそうだ。

森永 卓郎(経済アナリスト) 1957年生まれ 1980年 東京大学経済学部経済学科卒業。獨協大学経済学部教授。元三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部 部長兼主席研究員
「当面は500円市場の攻防が続くはずです。ファストフードとファミレス、カフェチェーン、弁当店を含めて、小さな予算の昼食代を奪い合う形になるでしょう。この激戦を生き抜くには、メガ食品を含め、いかに目先を変えて飽きられないようにするかがカギだと思います。私はオリジン弁当を傘下にしたイオンが大きなことをしそうな予感がしています」
ポスト・メガ食品は「ギガ」か「テラ」か、「スモール」か!?
まだまだ500円市場の激戦が続く中、各社はどのような次の一手を繰り出そうとしているのか。それこそが「ポスト・メガ食品」となるのだろうか。最近はメガマックがレギュラー化したほか、まぜそばなどの“ガテン系食品”も注目されている。メガ食品よりボリュームのあるギガ食品やテラ食品のブームが到来するのだろうか……。
「これから起こる非正社員の増大やボーナスカットによる平均賃金の低下、増税や社会保険料の増加、そして物価高は、庶民の生活を脅かしていくわけですから、当然メガ食品へのニーズは拡大していくものと考えられます。さまざまな飲食分野で“メガ”はキーワードになっていくでしょう」
「その一方で、メガ食品に対するカウンター──ロッテリアの『絶品チーズバーガー』のようなプレミアム系や、米国でブームになりつつある『スモール・ポーション(通常より量の少ないメニュー)』も拡大していくと思います。所得の二極化は低所得者を増やすと同時に金持ちも増やすからです」
「庶民の間でも『たまには贅沢をしたい』とか『太りすぎたので痩せたい』というニーズはあるので、プレミアムあるいはダイエット関連の食品は、別の意味で大きな市場を持つと思います」
それでは、森永氏がポスト・メガ食品ブームとして注目しているものは何か?
「低所得化は今後ますます進んでいくので、『ハイコストカロリー効率』食品がブームになると思います。一例として、「つぶあんマーガリンコッペパン」などが来るのでは。私はメガ牛丼を食べに行きましたが、思ったよりは大したことがなくて、簡単に平らげてしまいました。吉野家の特盛りの延長という感じでしたね。メガでは物足りない、というわけです(笑)」

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