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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第22回

ウェブの世界から消えてゆく日本

2008年06月24日 11時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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次のフロンティアは「携帯」


Blackberry

日本ではNTTドコモも販売している「Blackberry」

 SNSの次の流行は、モバイルだ。日本ではiPhoneが話題になっているが、米国では「Blackberry」のような本格的なスマートフォンが主流で、iPhoneはあまり売れていない。今度の3Gモデルにも「今ごろ3Gなんて新鮮味に欠ける」と、冷たい評価が多かった。iPhoneはアップルの許可がないと外部アプリケーションを端末に乗せられないため、ベンチャー企業にはオープンなBlackberryのほうが人気が高い。

 米国では、ベライゾンが700MHz帯の周波数オークションを落札した。ベライゾンは、SIMロックで特定の端末にしばりつけないオープンアクセスを採用すると約束し、OSにはグーグルの開発した「Android」を使うと言われている。ベンチャーの注目は、こっちに集まっていた。現在の携帯端末はプラットフォームが乱立し、キャリアごとにソフト開発するコストが限界に来ているからだ。



オープンな戦略が必要だ


 しかしSupernovaの会場でデモをやっていた携帯アプリケーションは、「そんなもの、とっくに日本にもあるよ」と言いたくなる簡単なものばかり。3Gもろくに普及していない米国では、「お財布ケータイ」とか「ワンセグ」のような重量級のアプリケーションは想像もつかない。この点では世界最先端の日本の携帯業界が世界に打って出るチャンスなのだが、会場では中国やインドは話題になっても、日本はまったく無視されていた。

 日本の携帯端末メーカーはキャリアの下請け、ソフト開発はその孫請けとして、ローリスク・ハイコストのビジネスに慣れてしまったため、リスクをとって自前で海外進出する会社がほとんどなく、進出しても高すぎて売れない。また自由な外部アプリケーションのインストールを許さない点ではiPhoneに似ており、このままでは「負け組」になる恐れが強い。

 米国のお気楽なネットベンチャーとは対照的に、日本の企業は「オープンにしたら市場を他社に取られる」と恐れる傾向が強い。しかし携帯も今やウェブがメインだから、「初めにアクセスありき」だ。日本のメーカーやソフトハウスも、オープンにしてアクセスを集めてから収益を考えるぐらいの大胆さが必要なのではないか。


筆者紹介──池田信夫


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「過剰と破壊の経済学」(アスキー)、「情報技術と組織のアーキテクチャ」(NTT出版)、「電波利権」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。



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