塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第8回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
表現する動機
2008年07月13日 15時00分更新
著作権の保護期間延長は 未来の国民に歓迎されるか
人はなぜ表現するのだろう。伝えたいことがあるから、表現したいものがあるから、伝えたい人がいるから、人々に見てほしいから、創造したいから、楽しいから、仕事だから、自己の存在の証だから──表現する理由は人それぞれ。理由は何だっていい。表現することはそれ自体、とってもすばらしいことだ。
では、著作権が得られるからとか、自分が死んだあとも50年間にわたって著作権に基づく収入が得られる可能性があるから、という理由で表現行為をする人が、どれほどいるだろう。まして、著作権の保護期間が「著作者の生存中+死後50年」から「著作者の生存中+死後70年」に延長されることによって創作意欲が増すという人が、果たしてどれくらいいるのだろうか。
(社)日本文藝家協会や(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)など16団体が「著作権問題を考える創作者団体協議会」を設立し、'06年9月22日、文化庁に対して著作権の保護期間を20年延長することを求める要望書を提出した。延長が必要だとする論拠のひとつとして、保護期間を延長すれば創作者たちの創作意欲が増すことを挙げているが、それは本当だろうか。
また要望書では「生存中+死後70年」が「国際レベル」だと主張するが、ベルヌ条約(世界154カ国が加盟する著作権の基本条約)が定める「生存中+死後50年」こそ「国際レベル」。「70年」を規定する少数の外国を見て「みんながやってるから我が国も」というのはまったく論理的でない。
一方、'06年11月8日、「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」が発足した。私も発起人の一人だ。国民的な議論をせずに一部の団体の要望に基づいて保護期間の延長がなされてしまうことを危惧し、まずはきちんと議論をしようと呼びかける。実際、発起人の中には延長に賛成の人も反対の人も、態度を留保している人もいる。
(次ページに続く)
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