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テクノドリームI:工学~それは夢を実現する体系

東大工学部で富野節が炸裂!ロボットの開発なんかやめましょう!

2008年06月17日 13時00分更新

文● 吉川大郎/アスキーネタ帳編集部

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富野氏のことば その2「ロボットの開発なんかやめましょう!」

「あんな上下動のする乗り物なんて、誰が乗るか! 気持ち悪くなるし、だいたい船酔いなんて言うレベルじゃない筈なのね」

━━IRTプロジェクトに関して話題を振られて━━

富野氏 「工学というものがあり得るんだよ」というお話をしろという事だったのですが、東京大学というような所でIRTというプロジェクトがあって、東京大学がその拠点になっているというのは、今回のお話をいただくまで本当に知らなかったのです。実際にホームページを覗いてみましたら、「少子高齢化社会と人を支える基礎技術の創出」という。斜め読みしかしていないのですが、基本的に、特にロボット工学というモノを、こういう風に役立てるのか。高齢化社会になっていく中で、若い人が少なくなっていく中で、「高齢者が死に切る間の看護くらいはロボットにやらせようぜ」というのが主旨なのですね。

 これは本当にもっともな話で、年寄り同士が看病したってたかが知れていますし、僕自身がそういう風にして、女房の面倒を見るのが僕なのか、僕が先に見られるのかして、死んでいかなくちゃならない。そんな社会が、これから50年くらいモロに続きます。皆さんのような若い方にご迷惑をかけるわけにはいかないので、なんとかロボット化したなかで死んでいくように努力します(笑)。

 そしてその時に、全部はマンパワーで対応できないからロボットの技術がいるというのは正しいのです。そういうことでロボットを開発してくれれば良いだけの話なのを「東京大学のIR拠点で、プロジェクトとして、ある。こういうテーマによって、ナントカ先生がこういう研究をしております」と言われると、全部分からなくなるのね。今みたいに言ってくれれば、少しは切実感を持って「あ、東京大学も偉いんだなあ、学生さんも含めて、みんなでがんばってくれよ」と言いたい。だけれどもなかなかそう言う気分に、今日までなれなかったんです。

 ということはどういうことかというと、僕よりもずっと若い、現在の中学生、小学生レベルが「東京大学に行って勉強したい」と思えるのか! というお話に繋がるかというと、それは繋がらないだろうと。そして繋がらないだろうと思うときに、たとえば僕みたいな民間人はこういう言い方をするわけです「ロボットなんかやっているヤツはバカだよね」っていう言い方を僕はします。

 どうして? だってさ、人間がやることを全部マネが出来るようなロボットを作るということは、“人間”という我々が、何にもしないで済むような道具を開発しているわけだから、我々は人間としての性能劣化をしてもいいんだよね! っていうことを社会的に認知してくれる工学が、世界中に広がるわけでしょう? それは「俺たちもう何もしなくていいわけだから」というような、思潮です。ひょっとしたら“思想”にまでなってしまうような概念を広げているだけなの「かも」しれないんですよ。僕はそう言います。ロボットだけ開発をしていて、人間が努力しなくても済むような社会を作っていくんだったらそんなロボットなんかいらないんだから、ロボットと共存する社会なんかダメなんだよ。人間だけが暮らしていかなくちゃいけないのに、今や、現在みたいなこういう環境 ―― まだロボットが一般生活に入ってきていないにも関わらず、日本人だって性能劣化を起こしているんじゃないの? という言い方をしちゃいます。

 だから本来、我々人間自身が支えられている工学論というものをないがしろにして、要するに純然たる理学系の工学の部分でロボットを開発されるのは、それはとんでもない●●●●だろうという言い方をします。そしてたとえば僕がここで使った●●●●だろうという表現が、実を言うと放送禁止用語なんです。ということは「人間の頭=頭脳というものを、どういうところで使っているんですか? 我々は」ということになってくるのです。本来、技術、アート、工芸、作るもの、作るものによって享受するもの、表現されるものと、我々の感性と、我々の能力と、そいうものを享受して暮らしている我々というものがいったい、何のために技術を行使しているのだろうかということが、とてもアヤシくなってきます。

 技術を使えば使うほど「●●●●が放送禁止用語なんだよ」と言うところでの技術論だけを開発してるようなことが、たとえばロボット工学に側面として見えているというのが、僕の感触としてあるんです。どうして僕がこのことをズバッと言えるかというと、人型のロボットに乗る子供を設定して動かして見たときに、あんなイヤな乗り物乗りたくないよと言うことが演出すればするほど分かってくるからですよ。あんな上下動のする乗り物なんて、誰が乗るか! 気持ち悪くなるし、だいたい船酔いなんて言うレベルじゃない筈なのね。となったら「四輪車のほうが絶対にいい」って言い切ります。だからロボットの開発なんかやめましょう!(教授陣、会場 大笑い)

次ページ <富野氏のことばその3 「35歳までは青少年」>に続く

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