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TREND Google徹底解剖第3回

世界は日本のGoogleコミュニティの鐘の音を聞くか (3/3)

2008年06月16日 08時00分更新

文●Debian Project 武藤健志

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Googleは巨大なオープンソースソフトウェアプロジェクト

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 オープンソースソフトウェアプロジェクトで著名な世界各国の技術者を貪欲に「Googler(フルタイム勤務社員)」として取り込むGoogle。日本国内においても、オープンソースソフトウェアプロジェクトで活動している知人友人からの続々の入社の報を聞くにつけ、Googleの変わらぬ勢いには驚かされる。


 と同時に、Googleの扉の向こうへと入ったとたん、Google入社の一助となったであろうオープンソースソフトウェアプロジェクトから彼らがやけに急速にフェードアウトしていくように筆者は感じている。まるで漆黒のブラックホールに吸い込まれたかのようだ。もちろん、彼らの成果はGoogleのプロダクトとして現れ、私たちのコンピューティング環境を豊かにはしてくれる。今回のDeveloper DayあるいはTech Talkのような場所では彼らの変わらぬ楽しげな姿も目にできる。しかし、彼らのかかわるプロダクトはいずれもGoogleという一色に塗り潰されており、個々人の軌跡をそこに見い出すのは難しい。


 オープンソースソフトウェアプロジェクトの1つDebian Projectの公式デベロッパーでもあり、Googleでソフトウェアエンジニアを務める鵜飼文敏氏は、「オープンソースソフトウェアプロジェクトへのコミットメントを継続している人もいる」と前置きするものの、フェードアウトの理由として、「Googleにおける常なるチーム開発やクロスレビューでの成長が、オープンソースソフトウェアプロジェクトにおける活動内容と同等かそれ以上のために、Googleでの業務で満足してしまうためではないか」と推測した。


 オープンソースソフトウェアプロジェクトが一定程度まで育つと、創立時のコンセプトを共有しないメンバーも増えてくる。ギーク(コンピュータオタク)の中には、技術的スキルは極めて優れているものの、社会的スキルを欠いていて他者と衝突ばかりを招く者がいる。逆に、やる気はあるものの、技術的センスを著しく欠いているために本来コーディングに注力したい技術者の手間を取らせてしまう者もいる。オープンソースソフトウェアプロジェクトが両者をいずれも許容するのは懐の深さという長所であるが、進化し続けるコンピューティング環境に対してプロジェクトの進行を遅らせてしまうという危険もある。


 これに対し、Googleでは、そういった技術的スキルと社会的スキルでレベルやバランスに問題のある者は、多段化された入社試験のフィルタリングでふるい落とされる。このため、Google全体が「話のしやすい理想的なオープンソースソフトウェアプロジェクトに近い」と鵜飼氏は語った。

終わりに

 今回のGoogle Developer Day 2008 Japanは、Google I/O開催の直後ということもあり、目新しくてメディアが喜び舞い踊るようなニュースバリューのある話題(「Androidをキャリア○○○が採用!」のような)こそ乏しかったものの、技術者向けには「中の人」の卒直な声を聞ける貴重な機会であったと思われる。

 難をひとつ言えば、各講演者のプレゼンテーションのレベルにばらつきがあると筆者は感じた(実際、同様の声は会場でもちらほら耳にした)。営業ではなく技術者だから……というのは、そつなくこなしたほかのエンジニアたちに失礼というものだろう。筆者自身の自戒としつつ、講演者の方々にはより良いプレゼンテーションを次回お見せくださることを期待したい。

 ホスピタリティに定評あるGoogleの提供した気さくな会場の雰囲気と、高い技術力に裏打ちされた知的好奇心を刺激するGoogleのテクノロジーセッションは、訪れた人たちに記憶を残した。今後もGoogleは、Developer Dayをはじめ、Tech Talk、デベロッパー交流会といった技術者向けのイベント・会合を継続、発展させることだろう。Googleの技術に興味のある人なら誰でも、そこで何か得られるものがあるはずだ。参加しない手はない。

 なお、本Google Developer Dayの模様は、近日GoogleよりYouTubeに映像がアップロードされるとのことなので、今回参加できなかった方もぜひご覧いただき、その雰囲気を感じとってほしい。

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