米アップル社の「Logic Studio」の開発を担当するメンバー3名が来日し、5月25日、アップルストア銀座で「Logic Studioの世界」と題したイベントを開催した。
今回来日したのは、プロダクトマネージャーのボブ・ハント、音楽制作関連製品ディレクターのザンダー・レソン、そして「Logic」の生みの親であり、現在は米アップル社のオーディオ/音楽シニアディレクター兼リードアーキテクトを務めるゲルハルト・レンゲリン博士の3名。彼らはアップルストア銀座3階の「シアター」で実演を交えながら、アップルの音楽制作ソリューションの魅力を来場者に熱く語った。このイベントのあと、ボブ・ハント氏にインタビューを行う機会に恵まれたので、アップルの音楽制作環境に対する取り組みについて話を聞いてみた。
プロミュージシャンが「GarageBand」で曲作り!
──ハントさんは「Logic」だけでなく「GarageBand」も担当しているということですが「Logic Express」「Logic Studio」を含めて3製品、それぞれどのような位置づけで開発しているのでしょうか?
まず現在出荷されているすべてのMacに付属している「GarageBand」は、子供からミュージシャンまですべての人のための音楽制作ツールと言えます。一方、本格的な音楽制作を始めたいと思う人向けの製品が「Logic Express」。さらに非常に高度な音楽制作を行うプロのために「Logic Studio」があるというラインアップです。これらは、どれも同じ技術的な基盤から作られています。「GarageBand」については、非常に成功した製品だと思っています。その成功の秘密は、2つあります。ひとつには、非常に簡単に品質が高い音楽を作れるということ。もうひとつが非常に幅広い層に使ってもらえるソフトである点です。「GarageBand」は、実は多くのプロミュージシャンが利用しているんですよ。
──どんなミュージシャンが使っているのですか?
ジェイ・Zをフューチャリングしたリアーナのヒット曲「Umbrella」は「GarageBand」の「Vintage Funk Kit 03」というループを使って作られています。実際に聴き比べてみるとわかりますよ。ほかにもアッシャーの「Love in This Club」という曲では追加ループサウンド集「Jam Pack Remix Tools」の中の素材が使われていたり、このような例はほかにもあります。GarageBandにおさめられている音源が、プロの人たちに認められているということ、そして同じ音源をだれでも使えるということ、これはわれわれにとって非常に嬉しいことです。
──本格的な音楽制作には「Logic」シリーズということですが、去年リリースした「Logic Studio」は以前に比べて非常に手の届きやすい価格(5万9800円)になりましたね。
これまでのアップグレードの中で一番大きな飛躍なったバージョンアップです。このリリースの目的は高度な音楽制作のソリューションを提供するというだけでなく、それを手頃の価格で提供することでした。
──価格が大幅に下がったことでユーザーの傾向は変わりましたか?
なんといってもユーザー層が大きく拡大しました。ただし、既存のユーザーも新しい「Logic Studio」を使ってくれています。新しいフィーチャーもたくさん用意しているので、昔から「Logic」を使っていたユーザーにも強くアピールできる製品だと思っています。
──「Logic Studio」の特徴を具体的に教えてください。
核となる「Logic Pro 8」では「パワフル・エディティング」、「サラウンドサウンド・プロダクション」などの先進的なフィーチャーを追加。また新しいユーザーインターフェースを採用し、使い勝手を改良しました。また「Logic Pro 8」のほかに、ライブパフォーマンスでの使用を目的とした「MainStage」、それまで「Final Cut Studio」の一部だったビデオ音響制作ソフト「Soundtrack Pro 2」といったソフトを加えて大幅な機能強化を図りました。膨大な音源ライブラリーも特徴のひとつですね。
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