iPhoneにAtomを採用するのは理にかなっている
中筋義人(マックピープル編集部)
WWDCとタイミングを合わせる形で、Atomも正式リリースされている。搭載の製品も出てくるとは思う。これまでのIntelMac以降のAppleとIntelの関係を見ると、IntelにはAppleのために新しいチップを作っているような感覚がある。両社の関係は良好で、Appleの新製品に新チップが採用された場合には、そのまま出荷も融通されている感じもする。Appleが一番先に新しいCPUを搭載した製品を発表して広告を打つというパターンがあった。良い宣伝になるし、Intelの戦略としても、「あのiPhonの中で動いているんですよ」と言えればメリットは大きいだろう。
Intelがどこにアピールしたいかというと、やはり他の携帯メーカーだろう。従来とは違うフィールドで新しいビジネスができる可能性がある。今まではPDA用チップという発想だったが、携帯電話という話になると、面白いと思っている可能性はある。
iPhoneに乗る乗らないは別として、乗った方がおもしろい。3G対応iPhoneの焦点のひとつはバッテリの持ち時間だ。現行のiPhoneは、バッテリが持たないのが致命的だと言われている。あれだけリッチなデバイスだから、本来は3Gの高速通信に対応するのが理にかなっているはずなのに、出てくるのに1年かかったのはそのあたりの問題があったのだと思う。それを解消するには、従来の消費電力とは違うCPUを載せないと、3Gははじまらないかなと思う。もちろん、3Gはより電力を使うから、もたないのでは? という声もあるのだが。
バッテリ持ち時間を伸ばす解決策としては「消費電力を下げる」か、「バッテリ容量を上げる」というのは自明だが、デザインのために本体のサイズが大きくなることや予備(あるいは交換)バッテリなどを嫌うであろうAppleとしては、やはり「消費電力を下げる」のがスマートな選択だろう。その切り札のひとつとなるのが、IntelのAtomではないだろうか。実際のAtom搭載機でのベンチマークなどはまだ行っていないので、Atomが実際どれぐらい省電力を実現できるかは不明だが、今後のロードマップとしてもさらなる省電力化を描いているので、将来へ向けての期待もできる。
インテルとしても、ARMが抑えてきたスマートフォン市場へ食い込む大きなチャンス。だからWWDC基調講演でのiPhoneのAtom採用発表&ポール・オッテリーニ登壇は固いのではないか。
従来のiPhoneのCPUはSamsungがライセンス生産している「339S0030」という型番のARMコア。Mac OS XはさまざまなCPUアーキテクチャに対応可能である点はPowerPCからIntel、そしてARMに移植してきたことでApple自身が示してきた。しかし、複数のプラットフォームの製品を展開すると、それだけ開発リソースが分散されてしまう。現状のMacで採用されているCore2系のCPUと命令セットと互換のあるAtomを採用すれば、開発のリソースを1つのプラットフォームに集中できるメリットがある。そういった意味でも、iPhoneにAtomを採用するのは理にかなっている。(談)