“つなげるだけで使える”ホームサーバーを作る
ASCII.jp HS1に関しては「簡単さ」を強調されていますが、今までのホームネットワークの経験を元に、どういった点を簡単にする必要があるとお考えになられたのでしょうか。
鞍田 まずはホームサーバーですので、コンテンツを「貯める」必要がある。この貯めることのハードルを、どれだけ下げられるかを考えました。
そのために、本体前面にマルチメモリーカードリーダーやUSBポートを用意したりとか、コピーボタンひとつでデータを取り込めるようにしました。また、やはり前面のボタンひとつで、サーバーのIPアドレスを簡単に調べられるといった点もそうです。
一般の周辺機器メーカーさんやIT系メーカーさんの場合は、こういったメカニカルな仕組みをコストをかけて実装しようとはなかなか思わない。しかし我々としては、サイバーショットやハンディカムといった機器を市場に提供していますので、「ホームサーバーと各種デバイスを、いかに簡単につなげるか」という点にこだわりを持っています。日常的に使ってほしいですからね。
少しテクニカルな部分になるのですが、新しいメディアサーバー/クライアント機能「VAIO Media plus」では改良されていますが、過去のVAIO Mediaでは、サーバーにクライアントからアクセスするときには、事前に「登録許可」の作業が必要でした。ネットワークにつないでから設定ページや設定ツールを開いて、「アクセス許可」の設定をやる必要があった。ネットワークにつなげたらすぐに楽しめるという状況ではなかったのです。
そういった点を改善し、HS1はそもそも公開するために買っていただく商品なので、デフォルトで公開するようにしました。
また、外部からHS1にアクセスする機能「ホームアクセス」も、セキュリティーを気にして「外からアクセスされたくない」というお客様のために、本体裏側にハードウェアスイッチを用意しました。これをオフにすると、単純に家の中からしかアクセスできないようになります。これもデフォルトではオンですが、今までのソニーの考え方だと、デフォルトはオフにしたでしょうね。
ASCII.jp でしょうね。
鞍田 もちろん、それはそれでお客様のことを考えた結果ですが、ネットワークの環境が整ってきたことによって、それを活用した楽しみも一般的になってきた。「時代が変わったのだから、DLNAもデフォルトで許可する、外からアクセスする機能もオンにしよう」と。
かつては、リスクとセキュリティーのバランスを考えた場合、セキュリティーを高めるとユーザービリティーが下がってしまった。それが今は、いいバランスが取れるようになってきているのかな、という気がしますね。
ASCII.jp 一般的なDLNAクライアントって、今ひとつ使いにくい面があります。例えばコンテンツの互換性が分かりにくくて、「この動画は見られるけど、あの動画はダメ」だったりと、ユーザーから分かりにくい。こうした問題はどう解決されているのでしょうか。
鞍田 それに対していくつか解決の方法も考えています。例えば、オーディオコーデックもいろいろ増えていますが、それをサーバー側でリニアPCMに変換して、クライアント側が対応していないコーデックでも再生できるようにしています(編注:DRMのかかったコンテンツは不可)。サーバー側で可能な限り、お客様が再生したいコンテンツを再生できるようにするトランスコードしているわけです。
ほかにも、ビデオファイルを一覧するときに、きちんとサーバー側でサムネイルを作っています。サーバー内で一度ビデオをソフトウェアデコードしてサムネイルを作ることで、ハンディカムで撮影した映像など、ファイル名からだけでは、映像の内容がわかりにくいコンテンツであっても、「これはあのビデオだ」と分かる。