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【SaaSトレンド・レポート】

電話番号でシングルサインオン、総務省が企業台帳整備へ

2008年06月04日 04時00分更新

文● 大川 淳

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電話番号を基盤に企業コードを一元化


 では、その企業ディレクトリで管理する具体的な情報の中身は、どうなっているのだろうか。

 総務省では企業ディレクトリを、「ネットワーク上で、業種・業界横断で利用可能な企業データベース」と位置づけており、企業を識別するため、「公開可能な企業コード」+「それに紐付けられる公開可能な基本情報」で構成されることを想定している。

 基本情報として考えられている要素は、企業の名称、所在地、設立年月日、電話番号など。企業を完全に特定できること、多くの企業を網羅し、利用しやすく公平が図られていること、企業コードとそれに紐付けられる基本情報の変更が適時なされること、変更の履歴が追跡できること――などを要件としている。

 実際の構築で疑問となるのは、既存のコードを基盤として活用するか、あるいは、新しいものを創設するか、ということだろう。もちろん、構築に要するコストや時間を考えれば、既存のコードを流用するのが現実的だ。

 ただ、その場合も、企業法人等番号、民間信用調査機関のコード、電話番号などを企業ディレクトリの要件に照らして比較すると、「完璧なものはない」(秋本課長)。その上で、網羅性、費用の点を含めた利用しやすさ、登録についての公平性などの面で、「電話番号」が優位にあるとの見解を同省では示している。

 そこでまずは、総務省のプロジェクト「ユビキタス特区」において、電話番号を用いた企業ディレクトリの実証実験事業を2008年度からスタートさせる計画だ。会計ASPと連動させた融資準備の支援サービスなどの開発・実証を進め、2010年度の実用化を目指すという。電話番号の課題である、番号変更時にそれを追跡する仕組みについても、実証事件で検証されることとなる。

企業ディレクトリをキーに、さまざまな企業間のシステム連携が進む可能性もある(写真はビジネスオンラインの藤井社長のプレゼンより)


さまざまな利便性をもたらす「企業ディレクトリ」


 企業ディレクトリ構想が現実のものとなれば、企業のID情報を一元管理できる企業台帳がネット上で利用可能になる。公的証明書類の取得などの際、企業情報の多重入力の手間が省け、企業側は、多数のIDやパスワードを管理することが不要となる。また、民間ベースのSaaS/ASPサービスでもこの企業ディレクトリを利用すれば、複数のサービスをシングルサインオンで使えるようになる。

SOABEX研究会代表幹事、ビジネスオンライン 藤井博之社長

 秋本氏は「電話番号というインフラの価値を、別の用途で示していくことができるのではないか。SuicaとPASMOが連携したことで小口決済のインフラを担うようになったように、(企業ディレクトリでも)同じような展開ができないものかと考えている」と語り、企業ディレクトリが、企業の効率性、生産性の向上だけでなく、さらに発展性を帯びる可能性を指摘した。

 一方、SOABEX研究会の代表幹事を務めるビジネスオンラインの藤井博之社長は「社会全体のために企業ディレクトリが必要だ。まず、作ってみないと、ニーズ、メリットなどが明確にはわからない。(実証実験を)突破口としていきたい」と話す。「電話番号を基盤とした企業台帳の発行は、世界で初めてかもしれない。まずはみんなで使っていくことが重要だ」(藤井社長)。

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