ホンモノのガンダム像にやっと今回めぐり合えた
── DVD版とBD版の「逆襲のシャア」、それからBD版の「機動戦士ガンダムF91」を続けてご覧いただいたわけですが。
麻倉 まず最初に観たDVD版も悪くないと思いますね。圧縮にまつわるノイズもなく、とてもきれいな絵に感じました。
解像度は当然低いわけですが、低いなりにバランスしていて、見苦しいところはなかったし、とてもスムーズな感じで、DVDの世界におけるひとつの水準をクリアーしていると感じました。
でも、そもそもDVDとBlu-rayというフォーマットの違いがあるんで、比べると全然別世界ですね。
DVDは元の絵に対して相当遠いところにポジションがあるなと。Blu-rayはオリジナル性が高いというか、オリジナルはきっとこういう絵だろうという想像力がとても働く。コントラストとか色再現性がすごく違う。「宇宙の漆黒さ」と「星々のきらめき感」がよく出ているなあと。
あとは色ですね。(シャアの着ている)服ひとつとっても、非常に深い色だったんだなぁと。あの赤はDVDでは分からないもので、Blu-rayの画を見た後では「赤っぽい色だ」「赤らしい」ぐらいの感想しか持たなくなります。非常に鮮烈な色ですよね。
── デジタルから制作された作品ではなく、フィルムをデジタル化した作品となりますが、そのあたりはいかがでしたか。
麻倉 ハイジョンで予想以上にいい画質になった背景としては、1980年代から90年代にかけての作品なので比較的フィルムの状態がよかったことも関係していると思います。
若干傷が修復し切れていないのは気になりましたが、全体のノイズが増えるとか、退色するというのはなくて「逆にここまで作りこまれた作品だったんだ」と分かるのがすごいですよね。BDで見ると、ここまで色にこだわっていたのかとか、絵のディティールに関してもここまでやっているのかという部分が見えてきます。
そういう意味では今まで別のフォーマットで見てきた人も「ホンモノのガンダム像にやっと今回めぐり合えた」という感想を持つんじゃないか、想像します。
ここまでの画質が収められていたことには感動しましたね。輪郭もすごくキレイだし、切れ味もあるし、絵にも透明感があって、ノイズが載りやすい赤い色にも全然のってないし、そういう意味では革命的です。従来のメディアに載っていたノイズはメディアに依存したノイズなわけで、元々のフィルムにはないわけですよね。これはベールが3枚ぐらいはがれて「本当の姿がついに出てきたぞ」って感じがすごくしましたね。
アニメファンは、新しいメディアが出ると必ず買い直すじゃないですか。VHSで持ってて、レーザーディスクを買って、DVDにして、さらにディレクターズカットを買ってって。そういう意味では、「映像技術の革新」の常に「最先端」を観てるわけですよね。そういう人たちにこそ、Blu-rayの価値があり、ガンダムという芸術の本質に触れられると思いました
作り手のエモーションがにじみ出てくる
── 鉛筆のディティール感とかそういうのも上手く表現されてましたね。このあたりは、フィルム時代のアニメならではなのかなと。デジタル制作された、最近のツルんとした線にはない、ゴリっとした力強い感じがあるというか。
麻倉 フィルムの中には、作品が作られたときのエモーションとか、作画マンの思いも含まれていたけれども、SDの画質ではそこまでの表現力がなかったということでしょうね。
Blu-rayで観ると、その背景や情熱もにじみ出てくる感じですね。手書きで書いた、アナログ的なテクスチャーが作品の背後に隠れていて、それがCGアニメとは違う分野の作品なんだという印象を際立たせる。単に細かいというだけでなく、作品に付随した情報がより多くBlu-rayには含まれているということでしょう。
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