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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第4回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

プレゼンのカクシン

2008年06月15日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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 しっかりと聴衆ひとりひとりに視線を向けて語りかけると、聴衆は自分に向かって話しかけられているように感じる。すると、そのプレゼン会場には「一対一」の関係が聴衆の人数ぶん成立する。「一対多」で始まったプレゼンが、個々人へのメッセージとしての意味を持つようになるのだ。視線のチカラは大きい。

 そのとき、込み入った内容のスライドが映写されていたらどうなるか。聴衆はスライドの理解に集中し、話者の視線を受け止める余裕はない。スライドに記載されている文章を読み上げたらどうなるか。聴衆は、スライドの文章を目で追うに違いない。さらに、あらかじめスライドのコピーが資料として配布されたらどうなるか。聴衆は、目線を落として手もとの資料を見るだろう。従って聴衆の納得を引き出すようないいプレゼンを成功させたいのであれば、スライドの内容はシンプルなものに限るし、そのコピーなど事前に配らないほうがいい。

 ネットワークの発達により表現の媒体が増えている大公開時代。媒体を通さないライブな情報伝達の価値が相対的に高まっている。なかでもプレゼンは、大勢の人に、まとめて生でメッセージを語りかける絶好のチャンスだ。スライドという媒体よりも、語りと視線によって聴衆と直接やり取りするところにプレゼンの意義がある。ダイレクト感こそプレゼンのエッセンスなのだ。


筆者紹介─塩澤一洋


著者近影

「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」がモットーの成蹊大学法学部教授。専門は民法や著作権法などの法律学。表現を追求する過程でMacと出会い、六法全書とともに欠かせぬツールに。2年間、アップルのお膝元であるシリコンバレーに滞在。アップルを生で感じた経験などを生かして、現在の「大公開時代」を説く。



(MacPeople 2006年10月号より転載)


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