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権利者は「ダビング10」を人質にしていない

2008年05月29日 22時03分更新

文● 広田稔/トレンド編集部

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「消費者は補償金を廃止してもいいのか?」


 そもそもなぜ補償金制度が必要なのかについては、椎名氏の発言をまとめると「メーカーが販売する機器や媒体が、ネットなどにおける無償コンテンツの発生、流通を支えていることに疑いはない。補償金制度は、そうした機器や媒体を販売することでメーカーが得た莫大な利益の一部を権利者に還元するもの」ということになる。

補償金制度が必要な理由について

「メーカー等が機器や媒体を売ることでどれくらい利益を得て来たのか」(椎名氏)を表すグラフ

 その上で、椎名氏は「今日のメインのテーマ」として、「消費者は本当に補償金を廃止していいのか?」と訴える。一見、奇妙にも思える意見だが、椎名氏は「補償金を廃止すれば消費者の負担が増えるだけ」と言う。

 現状、補償金は消費者の負担ということになっているが、これは建前で、実質的には機器や媒体のメーカーが払っているというのが、権利者側の見解だ。現状、文化庁提案では、「将来的に補償金を廃止して、ユーザーの私的複製についてはデジタル著作権管理(DRM)と契約によってコントロールする」という方針が示されている(関連記事)。しかし、椎名氏はこう反論する。

椎名氏 補償金制度による対応をやめて、契約と保護技術による個別課金に委ねられるとすれば、それこそ正真正銘の「消費者が負担する構造」が生まれて、メーカーがその「負担のサイクル」から未来永劫、開放されるだけのこと。その事実関係に消費者は気が付いていないように思われる。


 メーカーが無償コンテンツの発生、流通を支えて上げてきた利益から、消費者とともに私的複製のコストを払ってきた。その金を消費者だけが負担することになるのは、本当に消費者が望んでいることなのか──。それを「消費者に知ってほしい」と椎名氏は訴える。

椎名氏 今後、補償金制度から外れていく部分でメーカーが上げる利益についてノーケアでいいのかというのは、検討すべき重要な案件と考えている。メーカーサイドがあくまでも協力的な姿勢を持たない以上、われわれはそれに対抗する方法論や制度について考え続けなければならない。

消費者はそれでいいのか?

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