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日本のベンチャー育成に賭けてきた男

「マイナーさん、日本のITベンチャーってダメですか?」(前編)

2008年05月26日 07時57分更新

文● 吉田育代

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アレン・マイナー氏

 アイデアを実現するにはこの分野に詳しい人間を巻きこむ必要があったから、興味を示してくれそうな人物を探すことにしたんだけど、それが藤村(厚夫氏。@IT創業者。現在はアイディメディア代表取締役会長)さんだった。藤村さんは、インターネットで技術者向けにコンテンツを提供するという部分にだけ興味を持って、それが今日の@ITの原型になった。僕たちが考えたビジネスプランはほとんど残ってないんだけど(笑)、最初はそんな感じだったんだよね。

 そうこうしているうちに日本オラクルが株式上場して、持っていた株に期待していたより何倍もの時価総額がついた。じゃあ、お金もあるし、1つのビジネスにどっぷりつかるよりも、いくつかのビジネスを同時並行的に進めた方がおもしろいね、ということになって、インキュベーションビジネスに携わることにしたんだ。そのころちょうどアメリカで、idea labというさまざまなネットビジネスを生み出すネットインキュベータが話題になっていて、そういうことを日本を舞台にやってみたかったんだよね。

ITベンチャーのアーリーステージを 資金、技術、ビジネス面で支援

マイナー それで3つの会社に投資することにした。1つは本屋(笑)、1つはネットビジネス事業者にシステムを提供するシステム開発の会社、もう1つは何かネットビジネスの会社だったんだけど忘れた(笑)。でも、最初は僕も、永山さんも、カリフォルニアのメンロパークにいたんだよ。そこから必要な情報を得ればいいかと思ってたんだけど、そのうちにこれじゃダメだと思い始めた。シリコンバレーの伝統的な常識の一つに“オフィスから車で30分以上かかる会社には絶対投資しない”というのがあるんだよね。今では、彼らもインドや中国の会社に投資しているんだけどね(笑)。でも、やっぱり離れていると状況が見えないし、コミュニケーションが取りにくいし、何かが起こったときに迅速にアクションが取れない。そこで、日本の会社に投資するなら日本にいなくちゃということで、2000年に僕も永山さんも日本へ戻った。永山さんの方が2、3カ月早かったかな。

 それで僕たちがやったことは、“結果を出してください。期待しています”といってただお金を出すのではなくて、投資する会社に積極的に関わって、彼らが必要としているリソースを提供するということ。アイデアも技術も十分あるけど資金がないという会社には資金を提供し、おもしろいアイデアを持っているんだけど実現する技術に乏しい会社は技術面の支援をし、その会社が技術者集団で営業などビジネス面が弱いということなら、そちらの方面の支援をする。当時、日本のベンチャーキャピタルは、自分たちにとって海のものとも山のものともわからないビジネスシードになかなか手をさしのべなかったんだ。担い手がいないなら、そこを補完しようかと。その後、オフィスがないという会社のために場所を提供することもしたし、経営コンサルティングや経営トップのサーチ、新卒採用、人事部門のアウトソーシングなど、人材方面の支援も始めた。

吉田育代氏

ものいう投資家だったんですね(吉田)

―― ものいう投資家だったんですね。

マイナー その方が仕事としてはおもしろいしね。自分が頭がいいと思いこんでいるから(笑)、いろいろブレーンストーミングしていく中で、“それグッドアイデアね”というものがあれば楽しいし、100回に1回ぐらい“それいいね、ぜひやろう”というようなビジネスアイデアが生まれてきて、たとえそれを実行するのが僕でなくても、大きな達成感があるんだよね。あとから“これはあのときのブレーンストーミングで出てきたんだよね”と、振り返るのも結構好きだったりするんだ(笑)。

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