ドコモから発売される?
── 日本で発売するとなると、どのケータイ事業者か気になるところです。どこと組むと思いますか?
林 アップル的な視点で考えると、ドコモだと思います。
ただ、最近、イタリアなど一部の国では、複数のキャリアと組むケースも出てきているので、ドコモとソフトバンクの両方という可能性もあるでしょう。
パソコンとケータイとのサービス連携に力を入れているauも、企業文化という点では非常にいいマッチだと思うのですが、少なくとも今回は通信技術の違いからあきらめると見ています。
── 「アップル的な視点」とは何でしょう?
林 アップルのCEO、スティーブ・ジョブズなら、将来、少しでも多くのユーザーを獲得できるところと組むはずです。
そういう意味では、契約者の伸びが大きいソフトバンクモバイルよりも、今はユーザー数が減りつつあるけれど、元々、多くのユーザーを獲得していたドコモと組んだほうが得策です。
なぜかというと、ソフトバンクのユーザーは、元々は他社のサービスを使っていて、価格や端末の魅力をよく比較検討した上で、自らの意思でソフトバンクに乗り換えた人が多いからです。そういう人達なら、他のキャリアからいい製品が出れば、また移ってくれる可能性が高いわけです。
逆にドコモのユーザーの中には、「とりあえず一番大きくて信頼できそうなところの端末を買っておけば、間違いないだろう」という人、つまり、あまり吟味せずに事業者を選んでいる人が大勢います。
そういう「とりあえずドコモ」な人々は、わざわざ面倒な比較はしないでしょう。せめて、今、使っている端末が壊れたときに同じケータイ事業者で機種変更をするくらいです。そう考えると、たとえ今、ソフトバンクモバイルが顧客数でドコモを追い抜いたとしても、ドコモと組んだほうが最も多くの顧客にリーチできる可能性が高いわけです。
昨年、アップルはWindows版のSafariを発表して、Firefoxのシェアを奪うと言いましたが、これと同じ論理です。Firefoxを使っている人々は、いいブラウザーを吟味した人達なので、いい製品を出せば取り込むことができる。しかし、Internet Explorerを使っている70%強のユーザーは、そもそもブラウザーへの関心が薄い人なので、乗り換えさせるのも大変なのです。