iPhoneでは「2in1」の逆をやるべき
── iPod touchユーザーの中には、iPhoneですべてを済ませるより、iPod touchと日本のケータイを組み合わせて使うほうが便利と感じる人がいるかもしれません。
林 その可能性もありますが、一方で、iPod touchを持っている人こそiPhoneを欲しがるかもしれません。
実はiPod touchユーザーこそ、カフェでの待ち時間や街を歩いているときにでも使える「iPhoneのすごさ」をいちばん理解していて、「最もiPhoneに魅力を感じる人達」という見方もできます。
私はもしケータイ事業者が真剣にiPhoneを売ることを考えているなら、ドコモの「2in1」の逆をやるべきだと思っています。つまり、2枚のSIMカードに同じ電話番号を割り振るわけです。1枚はおサイフケータイに、もう1枚はiPhoneに入れておいて、どちらも同時に使えたら便利ですよね。
── キャリアが真剣でない可能性もあるんですか?
林 iPhoneを売ることは、キャリアにとっては大きな冒険となります。いいことも数多くあるけれど、その一方で、あまりうれしくないこともある。
例えばiPhoneが成功してしまうと、iモードのような公式コンテンツのビジネスは崩れてしまいます。もっとも、これについてはキャリアの重役の方々も、もうあまり長続きはしないビジネスだと腹をくくっているところがあるようです。
iPhoneが崩さないまでも、グーグルの「Android」(アンドロイド)など、あとに続く新世代ケータイは、いずれも公式コンテンツビジネスを過去へと葬り去るものです(関連記事)。
さらにiPhoneはパケット定額の料金が基本なので、ユーザーごとの平均月額利用料(ARPU)の向上があまり期待できません。つまり、ケータイ事業者を、単に回線を提供し、基本料金を徴収するだけの「土管屋」にしてしまうということです。
── それなら、なぜケータイ事業者はiPhoneを欲しがるのですか?
林 実際に売れるかどうかはともかく、iPhoneは今、最も注目を浴びている製品であることは間違いありません。iPhoneを扱うということで、ケータイ事業者に対するイメージが大きく変わるはずです。
「iPhoneを扱うべき」と主張するケータイ事業者の重役の中には、「扱ってもどうせ主流製品にはならない」と割り切っている人もいます。だから、今のビジネスへのダメージも少ない。彼らはむしろ「iPhoneを扱っていること」によるイメージアップや「扱えなかったこと」によるイメージダウンに注目しているようです。
一方で、彼らの予想がはずれて、「iPhoneが爆発的に売れる」可能性もあるでしょう。その時は、その時で、「やっぱりiPhoneの契約をとっておいてよかった」という話になります。どちらに転ぶにしても、iPhoneの契約を取っておかないと将来不安な部分があるわけです。