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京都本社を直撃取材

はてな流の「モノ作り」とは? 近藤社長語る

2008年05月27日 11時00分更新

文● 野田幾子、撮影●篠原孝志/パシャ

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近藤氏

(株)はてな社長、近藤淳也氏

 「国内で1000万人のユーザーが使ってくれるサービスを京都から発信したい」

 Hatena.inc設立のために渡米していた(株)はてな社長、近藤淳也氏が帰国してから即、着手したのは、はてな本社を東京から京都に移転する大胆な計画だった。

 東京には営業、インフラ、サポート、事務部門のスタッフ約10名を残し、サービスの要となる開発陣はすべて京都へ配置。京都への移転は、これまで以上にユーザーの生活にそったサービスを提供する決意を固めた意味合いが大きい。



「1000万人規模のサービス提供」へ、本格始動


はてな

はてな

 2006年8月、近藤淳也氏はHatena.inc設立のために渡米した。現地のエンジニアを雇ってウェブサービスを開発し、米国市場にはてなのサービスを普及させるためだ。

 米国での活動により、各方面の人脈を着々と築いてきた。例えば2007年3月には、グーグルのシニアビジネスプロダクトマネージャーで、日本法人の立ち上げにも携わったリチャード・チェンという強力な人材もHatena.incに加わっている。

 しかし近藤氏の渡米から1年あまり経過した頃、日本側のはてな組織は元気を失いつつあった。2001年の創業から7年間、誰も辞めずに来ていたはてなに、相次いで退職の意を表明する者が現れたのだ。

 はてなという会社としては、米国市場に食い込みさらに大きな一歩を踏み出したかった。それゆえに、ふたつの選択肢の中で揺れ動いた。米国でのビジネスにすべてをかけるか、それとも日本に戻ってはてなを建て直すか。

 米国に引き続きとどまるならば、優秀なエンジニアをこれから確保する必要がある。しかし、現状ではそういった人材を雇えるかどうかは不確定だ。また、英語のサービスを作ってヒットする保証もない。それに対して日本にいるスタッフはすでにかなり優秀な者が集まっている──。

 現在の状況をさまざまな角度から考えた結果、日本の優秀なスタッフを核として活動しようと決めた。はてなの現ユーザーは約80万人(2008年5月現在)、それをもっと100万、1000万規模のユーザーを獲得するようなヒット作を狙う方向へ。組織として、日本でそれを集中的にやるべきだと。

 渡米前から、米国でのサービス普及は困難だろうとの予測はしていた。他のIT関連企業でこういった例はほとんどないし、失敗する確率の方が高いかもしれないとも。そうは言っても、実際渡米したことによって最低限の拠点は出来上がった手応えはある。今後日本でサービスを開発し海外へ展開する際には、Hatena.incとそこで培った関係を足がかりに広めていく。



目的を持たないコミュニケーションの大切さ


 近藤氏が米国で感じたのは、日本との連携が想像以上に難しいことだった。インターネット経由でテレビ会議を頻繁に開けばうまくいくだろう、当初はそう考えていた。

 しかし、実際は違った。特に新サービスについての話し合いがうまく進まない。当初想定していたよりもはるかに多くの時間をテレビ会議に費やしてしまった。さらに、会議や面接のために帰国することも増えていく。近藤氏が日本にいなければ、回らないことが多すぎた。

 「実際はてなを離れてみると、目的を持たないコミュニケーションが果たす役割の大きさを思い知らされました」

 目的と時間を決めて会議を行なうことは、予定を決めさえすれば簡単だ。しかし、それがいいサービスを生むことにはつながらないことを強烈に意識することになった。同じオフィス内にいれば、ちょっとした雑談の中からアイデアが生まれて、「それはいいね」とすぐに形にできる。それが非常にいいサイクルになり、果てははてなの大きな原動力になっていたことを改めて認識するに至ったのだ。

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