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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第2回

ケータイとノートPCの境界―HTC Shiftは新市場を拓けるか?

2008年05月22日 11時18分更新

文● 西田 宗千佳

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タッチパネルでの操作を重視
「Origami Experience 2.0」を搭載

 冒頭で述べたように、Shiftはスライド式のボディを採用している。Shiftの場合、キーボードでの入力はあきらかに“補助”と位置づけて開発されているように思える。本体サイズの制約もあり、キートップサイズはほぼ均等に12.5mmとかなり小さめで、高速なタイプは難しい。タッチは軽めだが、けっしてよいタイプ感というわけでもない。LOOX Uのキーボードに近い感触だった。配列もいささか特殊である。特に気になるのはカーソルキー。右下に横一列に並んでいるため、非常に使いづらい。

キーボードを開いた状態

キーボードを開いた状態のShift。キーピッチは12.5mm程度で、長文の入力にはつらい。左上の丸い穴は内蔵カメラ

閉じた状態

閉じた状態。ディスプレーの右側には、無線接続設定切り替えボタン、解像度切り替えボタン、小型タッチパッド、指紋センサーが並ぶ。左側にはマウスボタン、SnapVUE(後述)ボタンがある。スピーカーは左右にあり、ステレオになっている

キー入力状態

キーボードが小さいのでキー入力時はやや窮屈になるが、使えないことはない

ピュアタブレットスタイル

閉じてピュアタブレットスタイルで。左にマウスボタン、右にタッチパッドがある。タッチパッドは小さすぎてやや使いにくい

 とはいうものの、この辺りはサイズからくる制約であり、しかたのないところ。だからこそShiftは、タッチパネルでの使い勝手を重視した作りになっている。その中核をなしているのが、「Origami Experience 2.0」という、Windows Vistaのタッチパネル操作向けアドオンである。

 Origamiと言えば、2006年春に鳴り物入りで発表された際にアピールされた、“扇形のタッチ入力キーボード”が思い出されるが、この“2.0”では採用されていない。だが2年の歳月を経て、「指での操作性」や「ビューワー的な用途」に特化した改良がなされており、実用的で使いやすくなっている。現在のところ、国内で手に入るOrigami Experience 2.0を採用したパソコンは、このShiftが唯一の存在である。

Origami Experience 2.0の基本画面

Origami Experience 2.0の基本画面。「Windows Media Player 11」を指で操作するようなイメージのUIだが、機能はさらに多い

 Origami Experience 2.0は音楽や映像を再生する機能を中心に、ウェブブラウザーや各種ソフトウエアの起動など、さまざまな機能を持っている。それぞれの機能は、Windows Media PlayerやInternet Explorerといった、Windowsの標準コンポーネントを利用しているのだが、それらの操作部分は、指先で簡単にできるよう工夫がなさている。

Origamiの基本機能は「ランチャー」。大きめのアイコンをタップしてソフトを起動する。マルチメディア系とウェブ系は最初から設定されているが、そのほか、自分の好きなアプリケーションを組み込むことも可能

 特に操作性がよいのが、ウェブ閲覧だ。論より証拠、以下の動画をごらんいただきたい。指先で自由にスクロールし、リンクをタップしてウェブ閲覧ができるようになっている。

Shiftの「Origami Experience 2.0」でIEを使った場合の表示。指でスムーズにスクロールし、ウェブを楽しめる。元のランチャー画面に戻るのもクリックだけでOKだ

 PDAなどではおなじみの操作方法だが、PDAと違い、ShiftはれっきとしたPC。PC向けのすべてのウェブサービスが利用可能だし、解像度もPDAより高い。

 Shiftの液晶ディスプレーは、解像度が800×480ドットしかない。いまや携帯電話と変わらない解像度だが、Shiftではドライバー側で1024×600ドットの情報を縮小表示することで、より解像度が高い状態で使うことができるようになっている。

800×480ドットと疑似1024×600ドット表示を切り替えられる

本体左の「解像度切り替え」ボタンを押すことで、800×480ドットと疑似1024×600ドット表示を切り替えられる。違和感は少ないので常時1024×600ドット表示でもよさそうだ

 ただし、Shiftでは画面を「縦」に回転して使うことができない。ウェブを見る時には縦長に持って、スクロールしながら読みたくなるものだが、残念ながらそういう使い方はできない。

左が800×480ドット、右が1024×600ドットでの表示。あきらかに右のほうが快適。疑似表示とはいうものの、違和感はかなり少なく実用的だ

 Origami Experience 2.0独自の機能として、「Now」と呼ばれるものがある。これはWindows Vistaのガジェットに似た機能であり、「タイル」と呼ばれるアプレットを介し、PC内やネット上のデータを簡単にチェックできる。

「Now」機能

Origamiの画面にアプレット(タイル)を追加する「Now」機能。今後のタイルの拡充を期待したい

 ただしタイルの種類がまだ少なく、実用性は今ひとつという印象だ。Vistaのガジェットがそのまま使える、といった形式ならば面白かったのだけれど。

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