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TeraStation ISを使ってわかった

低価格な「iSCSI製品」がもたらす福音とは?

2008年05月08日 02時00分更新

文● 大谷イビサ(ネットワークマガジン編集部)

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使って分かったiSCSI製品の真価


 さて、我らネットワークマガジンでは、6月号でバッファローのiSCSI対応ストレージ「TeraStation IS(TS-IGL/R5)」のレビューを掲載しました。パフォーマンスや使い勝手など、詳細は記事のほうを読んでもらうとして、ここでは実際に製品を使ってみて感じたことや、iSCSIの今後について補足していきたいと思います。

低価格なiSCSI製品「TeraStation IS」

低価格なiSCSI製品「TeraStation IS」

 TeraStation ISは従来NASがメインだったTeraStationのiSCSI対応版です。そのため、筐体等はNAS(Network Attached Storage)版と同じものの、中身や用途はまったく違うといってよいでしょう。NASはあくまでネットワークからファイルを共有するのが用途であり、複数ユーザーでの情報共有を目的にしています。これに対し、iSCSIはあくまでLANを経由して利用するローカルストレージです。イメージ的にはWindowsの「ネットワークドライブ」に近いのですが、これはあくまで共有フォルダがドライブのように見えるというものです。

 TeraStation ISでは、クライアントがiSCSIイニシエータというツールを用いて、ドライブを論理的にDASと同じ接続形態にします。このリモートマウントという感覚は、私のようなWindowsのユーザーでは、なかなかイメージしにくいものでした。ここがNASと大きな違いといえるでしょう。いったんマウントしてしまえば、使い勝手はローカルドライブと同じです。Windowsの「ディスク管理」を用いて、フォーマットやパーティションの作成が行なえます。

添付のツールからTeraStation ISに接続する

添付のツールからTeraStation ISに接続する

 iSCSIストレージは単一のコンピュータから利用するのが一般的ですが、TeraStation ISでは管理ツールからユーザーごとにボリュームを分割することもできます。DASとNASのメリットを組み合わせたユニークな機能といえるでしょう。

管理ツールからユーザーごとにボリュームを確保する

管理ツールからユーザーごとにボリュームを確保する

 いいところだらけのiSCSIですが、これまでなかなか普及しませんでした。この理由は、そのメリットを充分に発揮できなかったという点にあります。たとえば登場した当初、サーバ側ではCPUの負荷を下げるため、iSCSIのプロトコルをハードウェア処理するHBAを搭載するのが一般的でした。そのため、通常のギガビットEthernetマシンやスイッチでは、iSCSIは利用できませんでした。また、対応するOSも少なく、ソフトウェアを別途に導入する必要がありました。この結果、iSCSI製品を積み上げていったら、結局FCのSANと価格があまり変わらなかったという話もあります。

 しかし、iSCSIには追い風が吹いています。前述のHBAに関しては、CPUの高速化により、ソフトウェア処理が現実的になってきました。また、Windows VistaやServer 2008でiSCSIに標準対応したことも大きいでしょう。iSCSIは2003年にIETFによって正式な規格として標準勧告され、数多くのOSでサポートされるようになりました。Vistaでコントロールパネルを開くと、「iSCSIイニシエータ」を見ることができます。

VistaでもiSCSIをサポート

VistaでもiSCSIをサポート

 そして、今回のTeraStation ISのような低価格な製品の登場は、iSCSI普及の大きなきっかけになるでしょう。これまでiSCSI対応のディスクアレイ装置というと、何台もHDDが搭載される企業向けのラックマウント装置でした。これらはSOHOや中小企業にとっては敷居が高いものといわざるをえません。しかし、オフィスでも据え置けるTeraStation ISのような製品であれば、高い利用価値があります。使った限りでは、高いパフォーマンスを実現しているので、たとえばクライアントPCのバックアップを高速に行なうといった用途には最適です。SANでも、NASでもカバーできない、新しい用途を実現していけそうな製品です。今後、こうした低価格なiSCSI製品が増え、市場を活性化してくれるのを期待したいところです。

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