Wireless USBの実用度は?
転送速度はケーブルの3分の1程度
ハードウエア面でほかにない特徴をあげるとすれば、やはり「Wireless USB」の採用だ。Wireless USBはその名の通り、USBの無線通信版を目指した規格で、無線物理層にUWB(Ultra Wide Band)を使い、3メートル以内の距離では最大480Mbpsでの転送が可能、という規格となっている。
LJ750/MHの場合には、内部のスロットにWireless USBの通信カードを組み込み、受信機能を内蔵した「Wireless USBハブ」と通信をする形で利用する。規格的には高速転送がウリだが、実際に使ってみると、さほど高速という印象はない。
USB接続HDDをWireless USBハブにつなぎ、ハブをLJ750/MHから30cm程度離した場所において、データコピーにかかる時間を計測してみたのが、下記の表になる。
ファイルの数やサイズにかかわらず、転送速度はおおよそ5MB/秒程度。USB HDDを本体に直結した場合に比べ、3倍以上時間がかかっている。たまにUSBメモリーにデータをコピーするといった、速度を重視しない用途ならば問題ないだろうが、日常的なHDD接続に使う、といった用途には向かないだろう。
他方、通信速度を必要としないマウスやキーボードの場合、操作感は直結した場合と大差ない。LJ750/MHに搭載されたWireless USBの場合、無線の有効通信範囲内になると自動的に接続されるため、使い勝手は良好だ。
ただ、それだけのためにWireless USBを使う、というのも大げさな気もする。NECのオンラインBTO販売サイト「NEC Direct」で調べたところ(NEC Directでのシリーズ名はLaVie G タイプJ)、Wireless USB搭載機と未搭載機の差額は1万2915円と、小さな額ではない。Wireless USBハブにつなぐ機器は普通のUSB機器でいいため、好きなものを使えるというメリットもあるが、キーボードやマウス程度なら、Bluetoothでつないでもかまわないはずだ。
より高速な転送ができるとか、外付けディスプレーと無線接続できるとかいった、「Wireless USBならでは」の良さが出てこないと、積極的に選ぶ意味はなさそうだ。
「いいひとだけど垢抜けない」
ある意味NECらしいパソコン
さて、まとめである。
LJ750シリーズは、NECが「モバイル市場でのプレゼンス回復」を狙って開発した意欲作、だと聞いている。シンプルで好感の持てるデザインやスクラッチリペアという他社にない付加価値、そしてNECらしい実直なハード設計など、確かに「使えるモバイル」としての特徴を揃えた製品となっている。動作の安定性を発熱の少なさといった基準で評価するなら、実にいいパソコンである。
だが他方で、いくつも「詰めが甘い」と感じる部分があるのも事実だ。LEDの件にしろ、PCカード取り出しレバーの件にしろ、使ってみると実に「残念」な感じを受けてしまう。なんというか、「惚れさせるだけの作り込み」を感じないのだ。Wireless USBの搭載も実が少なく、「むしろ外して低価格化すべきでは」「同じ価格でSSD搭載ならば」と感じてしまう。
「いいひとなのに、素材はイケメンなのに、どこか今ひとつ垢抜けない人」といったモバイルノートだろうか。
- オススメしたい人
- ・安定性が高く、不快感の少ないノートが欲しい人
- ・ラフに扱っても傷みにくいモバイルノートが欲しい人
LaVie J LJ750/MHの主なスペック | |
---|---|
CPU | Core 2 Duo U7600(1.20GHz) |
メモリー | DDR2-533 2GB |
グラフィックス | Intel GM965 Expressチップセット内蔵 |
ディスプレー | 12.1インチワイド 1280×800ドット |
HDD | 160GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
無線通信機能 | Wireless USB、IEEE 802.11a/b/g/n(ドラフト2.0)、Bluetooth 2.0+EDR |
カードスロット | PCカードスロット(Type 2)、SD/SDHCメモリーカード |
インターフェース | USB 2.0×4、アナログRGB出力(D-Sub 15ピン)、LAN(10/100/1000BASE-T)、ヘッドホン出力など |
サイズ | 幅292×奥行き214×高さ29.8mm |
重量 | 約1279g |
バッテリー駆動時間 | 約6.3時間(JEITA測定法 1.0) |
OS | Windows Vista Home Premium SP1 |
価格 | オープンプライス(予想実売価格 約27万円前後) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。
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