楽天と楽天技術研究所のいい関係
―――では、サード・リアリティのビジョンに沿った結果、前述のまつもとさんとの開発などがあるということでしょうか。
森:現在の具体的な研究内容は「言語解析/データ計算」、「マルチメディア/ユーザーインターフェース」、「大規模分散」という3つの分野となっています。私たちが進めている研究は、言わばバックエンド側のものです。ユビキタスは研究分野として非常に魅力的で数年以内に着手したいと思います。その前にはまず何よりもこの基本となる分野で着実に技術を蓄積する必要があると思っています。例えば、マルチメディア関連では画像に何が写っているのかを判別する研究をしています。ユーザーの感じているリアリティをデータとして表現できるものにしていかねばなりません。人間は写真を見れば、人が写っているものだと簡単に分かります。この現実をデータとして扱えなければならないのです。
さらに、これらの処理を大量のデータに対して行なえるようにしないと、今後のインターネットの情報爆発に対応できません。これを実現するために必要なのが「大規模分散」というわけです。こうした準備を経て、ある程度行けるだろうという見極めが付けば、ユビキタスやインタラクションといった研究に移れるのではないかと……。だから今はこうした研究ではなく、バックエンドを実現するところを研究しています。冒頭で解説したまつもとさんとの研究もこのうちの1つです。
――― さきほど、「短期的な事業戦略に直接結びつかない研究」だとおっしゃていましたが、まったく無関係というわけでもないですよね。
楽天技術研究所は、次に楽天が行なう新サービスを考えることはありませんが、ビジネス側とはつねにコミュニケーションを取っていて、できれば、我々の研究を見て「こういう技術が○○に使える」という形になればと思っています。我々の研究がビジネス側にうまく利用されるようになるのでは考えているので、さまざまなコミュニケーションを通して、行なわれているビジネスの中から、ビジネス側の見えないニーズを掴むようにはしています。
- ■取材協力
楽天(株)
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