このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

業界研究レポート 第4回

動画配信業界・後編

どうなる動画配信業界――深夜アニメがなくなる日

2008年05月01日 16時00分更新

文● 斉藤邦雄(大空出版)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「深夜アニメ」の将来はいかに!?

 とはいえ、テレビ局も決して一枚岩ではない。テレビ局は大規模なコンテンツホルダーであるが、すべての番組が彼らの所有するコンテンツとは限らない。その代表的な例が「深夜アニメ」だ。プライムタイムのアニメはテレビ局が製作者から購入して放映している。つまり、これらはテレビ局のコンテンツであり、放送中のコマーシャルによって収益を上げるビジネスだ。一方、深夜アニメは製作者が放映枠を購入している=製作者のコンテンツとなっている。深夜アニメにとって放送電波は単なる流通経路で、テレビ局は中間業者に過ぎない。コンテンツホルダーである製作者は、作品がパッケージとして購入されることで収益を上げられる。すなわち、著作権管理は必須事項であるものの、必ずしもテレビ放送や有料配信にこだわる必要はないのだ。

 現在、GONZOは新作アニメを海外向けにYouTubeなどで、MTVはアニメコンテンツをニコニコ動画で、それぞれ無料配信を開始している。現在、これらの提携による費用は明らかにはされていないが、テレビ放映枠より安価であると見られている。また、テレビは放送エリアが限定されているのに対し、インターネットは原則的に配信エリアに制限がない。テレビとインターネットのどちらが流通経路としてメリットが大きいのかは明らかだ。現在、動画共有プラットフォームでの著作権管理が急速に進展していることから、テレビ深夜帯からインターネットに移行するアニメが増えていくことだろう。

 ともあれ、大多数のユーザーがコンテンツ配信プラットフォームも動画共有プラットフォームも同一視しているのは、「プラットフォームが何にせよ、これまで慣れ親しんできた地上派テレビ放送と同じ感覚でコンテンツを視聴できればいい」という本音に由来するのではないだろうか。事業者はユーザーに対して「何が従来のテレビ放送と同じなのか」を捉え、ビジネスを展開していく必要がある。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ