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業界研究レポート 第3回

動画配信業界・前編

どうなる動画配信業界! 儲からなくてモドカシイ? 

2008年04月30日 12時00分更新

文● 斉藤邦雄(大空出版)

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コンテンツ配信で成功するのは有料配信? 無料配信?

 ネット系と放送系の事業者が複雑に絡み合う中、各社はどのようにして収益を上げているのか。まずはコンテンツ配信プラットフォームを見てみよう。Gyaoの場合、著作権を買い付けた映像作品や自主制作番組を無料オンデマンド配信する一方、広告によって収入を得るビジネスモデルとなっている。だが、1500万人以上のユーザーを抱えながらも広告の売り上げが伸び悩んでいることで、採算では苦戦が続いている。映像作品の購入費や番組の制作費に見合うだけの広告収入を、いまだ得られていないということだ。有料コンテンツの充実化も図っているが、それで事業が好転した明確な結果は出ていない。

 同じくコンテンツ配信プラットフォームであるテレビ局は、過去に放送した膨大な映像作品を自社で保有しているので、Gyaoのようなコンテンツ購入費や制作費は大幅に圧縮できる。さらに有料配信とすることで、資産を有効活用して収益を上げることを目指している。とはいえ、中でも力の入っていた第2日本テレビでさえユーザー獲得は芳しくなく、無料配信を大幅に増やし、既存のテレビとのクロスメディア広告などによって業績が向上してきたという。やはり有料配信であるアクトビラは、2月にTSUTAYAと提携して今後はハリウッド映画も配信していく構えだ。2011年までに普及台数7000万台、接続率20%以上を掲げ、今年度末までに100万台突破を成功ラインとしているが、現在は約20万台にとどまっている。今のところ、無料配信も有料配信も事業単体では採算割れと言えよう。

動画配信業界

コンテンツ配信プラットフォームのビジネスモデル

ユーザー獲得に成功した動画共有プラットフォームだが…

 次に、動画共有プラットフォームを見てみよう。YouTubeの場合、ユーザーは無料で映像コンテンツを視聴でき、サイトに表示される検索連動の広告を主な収入源としている。一見、Gyaoなどと似ているように見えるものの、実は根本的に異なったビジネスモデルであり、最大の強みとなっているのが「コンテンツの供給源がユーザーである」ことだ。事業者側にしてみればコンテンツの購入費や製作費を必要とせず、ユーザーは(しばしば議論されているが)著作権による制約を無視した多種多様なコンテンツを無料で視聴できる。操作性や利便性に優れていることもあってユーザーは爆発的に増加し、1日に3万5000以上のコンテンツがアップロードされるまでに成長した。

 世界的規模でユーザーを抱えるYouTubeを、コンテンツを製作・配給する業者が見過ごすはずもない。アメリカの映画制作会社やテレビ局はPV、任天堂やナイキはCMの配信に利用するなど、YouTubeの利用価値はますます高まっている。そして、慎重な姿勢を見せていた日本の企業でも、東京メトロポリタンテレビジョン(株)や(株)角川グループホールディングスなどが提携を開始した。多くのユーザーを獲得したことが新たなビジネスモデルを生み出している。とはいえ、常に「著作権侵害」でコンテンツホルダーなどに指摘されており、一概に順風満帆とは断言できないのだ。(後編に続く)

動画配信業界

動画共有プラットフォームのビジネスモデル

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