勝負の分かれ目はどこにあるのか
―――当時の日本はインターネットの可能性を大変低く認識していたと感じられていたわけですが、日本のマーケットの特殊性についてもう少しお考えを教えて下さい。
森:まず日本では、事例がないために海外のIT関係者と、例えば「SaaS(Software as a service)」の意義や優位性に関して実践的議論をすることもできなければ、さまざまな技術などをきちんと認識することすらできません。その特殊性を利用して成り立つタイムマシン経営―――米国で流行したものを1年ぐらいしてから取り込むというやり方―――にも「日本はこのままでいいのか?」と危機感を感じていました。
インターネットで世の中が大きく変わり、国際的に活躍していく人も増え、アメリカでも日本でも同時にいろいろなことが起こるようになるでしょう。すると、タイムマシン経営では通用しません。インターネットを中心としたこれからの変化に、日本は取り残されてしまうのではないないか? そう思う中で、日本から世界に発信していけるようなことを経験したいと考えるようになったのです。
―――インターネットにおいて、日本から世界に発信していけるようなことを経験したいとお考えになったということですが、それで楽天を選んだのはどうしてでしょう?
森:漠然と「インターネットはこれからもすごくなる。Web2.0はその予兆でしかない」と感じていました。また、インターネットの中でさまざまな研究が行なわれるようになり、いろいろなビジネスに研究開発が取り込まれていく。今後もこうした勢いは加速していく中で、アカデミックとビジネスのミゾをいかにうまく越えるかが勝負の分かれ目になっていくだろうと考えました。コンサルティングという仕事ではそれに対応できないので、研究開発を必要としているところへの転職の必要性を感じたわけです。
楽天には、かつて一緒に仕事していた人が転職していて、知り合いも多く、つき合いがありました。そこで、楽天の安武(取締役 常務執行役員開発・編成統括本部副本部長)に会ったときに、先ほど述べたような話をすると「それはウチでやるしかないですね」と言われたのです。
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