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2000~3000億円の投資がゴロゴロ

FPD――生き残りのための投資合戦

2008年04月22日 12時00分更新

文● 大河原克行

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月刊アスキー 2008年5月号掲載記事

日韓第8世代以降工場一覧

日韓両国に次々と建築が進むFPDパネルの製造工場。日本は主要工場が関西に集まっている。

 デジタル家電市場における生き残りをかけて、薄型パネルの生産設備投資が加速している。中でも注目が、シャープが2010年の稼働を目標に大阪府堺市に建設中の液晶パネル工場。第10世代のパネルサイズを採用し、42型換算では月に108万台のパネルが生産できる予定。堺工場に関しては、すでに提携を発表している東芝、資本関係があるパイオニアに加えて、同工場を運営する子会社にソニーが34%出資すると発表。安定操業に向けて強力なパートナーが加わった。

シャープ片山社長とソニー中鉢社長

シャープの片山社長とソニーの中鉢社長が揃って登場。シャープが堺市に建設中の第10世代液晶パネル工場に1/3をソニーが出資することが電撃的に発表された。

 一方の松下電器産業だが、2009年5月に稼働予定のプラズマパネル生産の尼崎第5工場は、現在の第3、第4工場を合わせたものより大きい、月産100万台(42型換算)の規模を誇る。2280×3920ミリのパネルサイズは、42インチで16面取りが可能で「シャープの第10世代よりも大きい」という。

 同社はさらに、日立製作所の子会社がマジョリティを握っていた液晶パネル生産のIPSアルファテクノロジの過半数の株式を取得すると発表した。そして姫路に第8世代の液晶パネル工場を建設。約3000億円の投資も全額負担する。同工場では32型換算で年間1500万台の生産が可能となる。

 パナソニックAVCネットワークス社の坂本俊弘社長は、「液晶と技術的に似ている有機ELの垂直統合モデルの実現に布石を打っておく狙いもある」と、新工場が将来に向けた投資であることを示す。同社は5800億円規模の大型投資により、プラズマ、液晶、有機ELという3つのパネルすべての垂直統合型生産体制を確立することになる。

 積極的な投資を行う企業の一方で、日立や東芝のパネル生産会社への出資縮小や資本引き上げ、パイオニアがパネル生産からの撤退を発表するなど、調達戦略の姿勢を鮮明に打ち出す動きも見逃せない。

 パネルの供給体制は2009年までは逼迫するとの見方が支配的だが、国内企業だけでなく、韓国のサムスン、LGも投資の手綱を揺るめるつもりはない。これだけの拠点が相次ぎ稼働を開始すると、2010年以降、需要を供給が上回る可能性も指摘されている。各社が薄型テレビ事業における立ち位置を模索する一方、主力となるパネル技術の行方と需給バランスの変化がどうなるか。このあたりが薄型テレビ市場における今後の各社の勢力図を左右することになろう。

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