
名越康文さん 1960年生まれ。精神科医。1997年より、ソフトな語り口と親しみやすいキャラクターで、ラジオのDJで人気を評し、以降多メディアで活躍。近年は、精神科医というフィールドを飛び越え、浅野忠信が映画で主演し話題となったマンガ「殺し屋1(4巻より)」の原作ブレーンをはじめ、精神科医からみた、映画・音楽評論など、雑誌を中心に幅広く活躍。
今期が始まり、早くも半月。上司や同僚、部下など、新しい顔と接する機会が多いこの時期は、人間関係を新しく構築しなければならない時と言えます。しかし、明るい春のイメージとは裏腹に、このような人間関係に負担を感じる人は多いようです。特に、性格的に“シャイ”な人なら、会社組織での出会いや人間関係になおさらストレスを感じてしまう場合もあるでしょう。本記事では、精神科医である名越康文さんがお勧めする対人ストレスの対処法を紹介します。
ストレスの80%が対人ストレス
一言で「ストレス」と言っても、人の個性がいろいろであるように、ストレスの内容も千差万別な印象があります。しかし、そうは言ってもストレスには“傾向がある”と名越さんは言います。
「人間が感じているストレスの80%は、対人関係と言えます。それ以外は多額の借金があるとかいわゆる特殊なケースです。『ストレス』と言ったら、まず対人関係が原因だと考えた方がいいでしょうね。仕事関係のストレスだと思っているものも、ちゃんと分析してみると、ほとんどの原因が対人関係です。例えば、(誰もが進んでやりたいと思わないような)変な仕事を振られたときに感じるストレスって、実は“変な仕事”に対するストレスではないんですね。『僕は期待されていない』っていうストレスです。急に変な仕事を振られたとき、人は『もう期待されていない』と感じてしまい、それがストレスなるのだと思います」
ケータイやメールがストレスを増加させる!?
また、対人ストレスがここまで顕著になったのは実はここ10年ではないかと、名越さんは精神科医というお仕事柄感じるのだそうです。
「ケータイやメールが登場したことで、対人関係の中でポストポンする(Postpone─返事を延期する、見合わせる)機会がなくなったことが影響しているのではと思っています。ケータイがなかった頃は、手紙であれば相手から返事がくるのに2、3日は待たないといけませんでした。本当はこの相手からの返事も待つ時間が大切だったのだと思います。自分と相手との人間関係を振り返ることができたからです。でもメールは一瞬で届き、返事もすぐに返ってきてしまう。相手の人間性や相手と自分の関係性を認識する時間もないから、結局上手にコミュニケーションができない。だから、一喜一憂してしまうたびにストレスを感じてしまうのです。こうして現代人は徐々にコミュニケーション下手になってきたのでしょう」

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