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山谷剛史の「中国IT小話」 第25回

Atom効果で、中国のモバイルは活性化するか?

2008年04月09日 20時17分更新

文● 山谷剛史

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それでも成功の可能性があるMID


 ところで上海のIDFで登場したMID。これもUMPCやスマートフォンのように成功しないかというと、そうでもないようだ。

NetBook

IDF上海で展示されていた「NetBook」(インターネット接続がメインの低価格ノートPC)

 ハードウェア的に、Atomプロセッサーを利用したMIDなのでバッテリーの持ちが長いことや安いことが魅力的なのは当然として、今回展示されたMIDの多くが以前のUMPCと異なり、小さいハードウェアの中にキーボードを収めていることは中国のニーズに合致している。またMIDを展示した企業の中で、唯一の中国市場をメインに展開している愛国者(aigo)は、同社製のMIDでチャットソフトのQQができることをCEOの馮軍氏が中国の顧客に向けてアピールした。

 ハードウェアの特徴以外でもMIDが普及する要因はある。

 まず、8月8日より開催される北京五輪前には中国の大都市を中心に中国版3Gサービスの開始が挙げられる。レノボのMIDの「IdeaPad U8」も、愛国者のMIDも、発売は7月を予定している。発売のタイミングと同じくして中国版3G、すなわち中国が主導で開発したTD-SCDMA、ないしはそれに加えてCDMA 2000とW-CDMAが始まる可能性が高いのだ。



3Gチップ内蔵のスマートフォンにも期待


 もちろん、3Gチップを内蔵したスマートフォンも登場するだろう。

 画期的なハードウェアと通信インフラがほぼ同時に出揃うとあり、「どうせ買い換えるならより良いものを」と考えるのが強い中国人の購買パターンからして「2Gスマートフォンから3Gスマートフォンへの買い替え」よりは「2Gスマートフォンから3G MIDへの買い替え」のほうが自然だ。

 中国を巨大市場ととらえるMIDメーカーはすでに3Gのチャンスを狙い、アピールしている。IDF上海で中国メディアに対し、ASUSは「中国移動(日本でいえばNTTドコモなどにあたる)などのプロバイダーと相談し、パッケージとして販売しようと相談をする可能性はある。TD-SCDMAの商用サービス開始の機会を見逃すことはできない」とコメント。

 またサムスンも「すでに3Gのチップは準備済み」とアピールした。

 DVDやVCDプレーヤーとしても使いたいという人には向いていないが、そうした消費者は組み込み向けの「Atom」(コードネーム:Diamondville)ベースのノートパソコンと3Gのデータカードという組み合わせに走るのかもしれない。

 UMPCやCentrinoは中国ではパッとしなかったが、AtomベースのMIDは中国で成功する要素があるのだ。


山谷剛史(やまやたけし)

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。

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