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東方の三賢者が贈る、日本へのアドバイス

上場するなら金をくれ──中島×小飼×津田・鼎談(前編)

2008年04月08日 09時00分更新

文● 斎藤温、撮影●曽根田元、聞き手●広田稔/トレンド編集部

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お金がなければ「株」


小飼 日本でもハードウェア系の企業ではわかっているところもありますよ。「メタルカラーの時代」(著:山根一眞)というインタビュー本では、新日鉄の人が「うちに来れば100億円の機材で遊べる」と言っている。およそ技術者で100億円の機材で遊びたくない人っていません。技術者がお金を欲しいのも、新しいオモチャを買うためですから(笑)

津田 僕は「ナタリー」という音楽ニュースサイトを運営するITベンチャーもやっているんですが、そういう人間からするとどうしたらいいのかって悩むところは多いですね。

 今、ウェブ技術者はどこも足りてなくて、年収400万円程度じゃなかなか優秀な人材は来てくれない。小さなウェブサービスは属人性が高いというか、それだけ一人の技術者に求められるレベルが高くなりますから、自分で最初から最後までサービスを作って、さらにメンテナンスまでできるような技術者でないと、せっかく来てもらっても持てあましちゃうみたいな感じはあります。

小飼 そういうときのための株ですよ。株で払うから、後で会社が大きくなってからキャッシュアウトしてね、という。

津田 一緒に博打に乗ってもらう、ということですか。

小飼 そういうことです。



ネットイナゴではなく「ネットバチ」


── 博打に乗るという話が出ていましたが、日本にはそうした「山師」的な人が多くない印象があります。

小飼 そんなことはないですよ。たくさんいます。日本では山師が目立つのはすごく損だから隠れているだけです。

中島 本当の金持ちは隠すのが上手だから。米国は逆で、金持ちは目立っていたほうが得なんです。これはカルチャーの問題だから仕方がないかもしれない。

津田 音楽業界に限りませんが、コンテンツ業界には山師的な人は確かに多いですね。東京で自分の会社潰して金を持ち逃げた人が、数年後大阪でしれっと復活していたりみたいな。

 良くも悪くもコンテンツビジネスは一発当てれば大きいし、当てた人が正義みたいなところはありますから、その分、山師的な人の方が成功しやすいんでしょう。今、成功してる人も、何度も失敗した中でしぶとく生き残ってきた人が多い。もちろんその陰で消えていった人もたくさんいるんでしょうが。

小飼 税収のことを考えると、山師はもっと増えたほうがいいと思います。1万人から税金を取り上げるのは大変ですけど、100人の山師からだったら楽ですから。何より、山師にとっては何でも宝の山に見えますし。

 最近ではネットイナゴ問題なんて言われてますけど、彼らは僕の言説や考えをネットに拡散してくれてるんですよね。僕のブログが花だとしたら、色んなところに花粉を持って行ってくれている。「ネットイナゴ」じゃなくて「ネットバチ」と言っても過言じゃないです(笑)

中島 僕のブログでも、あるエントリーが荒れて大量のトラフィックが流れてきたときに、タイミングを見計らって関係ある本の書評エントリーを張るんですよ。そうすると、その本が売れるんです。これもある意味ハチみたいなものですね。ブログの炎上も山師にかかれば宝の山です。

津田 それでもたまにしょうもないことに茶々を入れる連中がいたり、どうでもいいことで炎上しているのを見ると「みんな暇なんだなぁ」と思いますよ。

中島 あれはネットのほんの一部だと割り切ってます。例えば2ちゃんねるでも、ひとつのスレッドが荒れ始めるとどんどん荒んでいくけど、常識的な人はそのスレッドから離れていったりして、結局変な人しか残らないですよね。

小飼 2ちゃんねるは世界最大の掲示板だと言われていますが、常時ユーザーは300万人いるかいないかでしょう。はてなブックマークに至っては、さらにその10分の1程度。そこの一部の人間が騒いでいるのを指して、「これがネットだ」なんてことはないです。

中島 だから僕は小規模な炎上が起こったり、変なコメントが来ても、結局は少数派だと思って自分でフィルターをかけますね。10個中5個が変なコメントでも、僕の味方をしてくれるサイレントマジョリティーが後ろにちゃんといるという確信を持っています。

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