社内をシリコンバレー化したグーグル
── 山師の話に戻すと、米国ではどのようにして山師が儲けているんでしょう?
小飼 米国では山師はいきなり大企業には入りません。まずは自前で会社を作って、サービスなりソフトなりを開発します。そして、会社ごと有名なところに買ってもらって儲ける。
中島 やはりシリコンバレーというのはすごい場所なんですよ。いいビジネスアイデアは色々な技術者達が切磋琢磨した中から生まれ、お金もベンチャーキャピタルがきちんと出すというシステムが完成されている。そうすると、すごくオープンな自然淘汰が起こるんですね。
でも、その自然淘汰も会社が大きくなると社内で起こらなくなってしまう。大企業の中では個人が一発当てることができないですから、山師的な人間は外に出てしまう。そうすると、結局、いい人材を社内に蓄積しようと思っても、外に出てしまうから買収をし続けないといけなくなるんです。そのジレンマから逃れるために、グーグルは社内をシリコンバレー化することを思い付いた。
グーグルには野生の血が足りない?
── グーグル自体が「パラダイス鎖国」を構築する、というわけですね。
中島 そう。Googleは中にパラダイスを作ってあげて、山っ気がある人間に「外でやるよりもウチでやったほうが面白いことができるよ」と言っている。
「ベンチャーだったら1台のサーバーしか使えないだろうけど、ウチなら1000台のサーバーが使えちゃうよ」というように。内部で自然淘汰を起こしていないと、グーグルはグーグルでなくなるから死活問題でもあると思う。
小飼 だけど、そろそろグーグルには野生の血が足りなくなると思います。結局、グーグルが自前で作ってすごかったのは、検索アルゴリズムとGmailくらいですからね。ほかのサービスは外から買ったものばかり。
でもそれでいいんです。米国で成功している企業というのは、「何が欲しいのか」を明確にして企業買収を行なっています。会社間の政治がからんで、そこを配慮しないと失敗するんですよ。AOLとタイムワーナーの合併はその典型ですね。あくまで帳簿上ですけど(2002年通期の最終)赤字が11兆円になったなんて、流石にのけぞりましたよ。
津田 サービス、ブランド、人材、客といったさまざまな要素がある中で、欲しい物を取捨選択して買収計画を設計をしているということですか。日本だと、何も考えずにとりあえず伸びそうなネットベンチャーに買収を仕掛けている大企業もありますよね。そういう買われたベンチャーに話を聞きに行くと、何か面白いことをやろうと思っても、とにかく親会社の顔を立てて決済を通さなきゃいけないというような話ばかりが先に来てしまう。ベンチャーなのに社員の目が死んでるみたいな感じなのは、可哀想ですね。
買う企業によっても違うとは思いますけど、買う側が大手の通信業者だったりすると、買われた側は好きなことできなくなってる印象を受けます。買う側だけでなく、買われるベンチャーのほうにも問題があるんでしょうね。
小飼 米国でもちゃんと設計して失敗することがあるんだから、何も考えてないと絶対に成功なんかしないですよ。
*中編に続く
