同日、東京都内にて開かれた新製品発表会では、インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏らにより、AtomおよびCentrino Atom プロセッサー・テクノロジーの紹介のほか、搭載機器の参考展示などが行なわれた。
吉田氏はポケットに入るサイズのMIDが高速なワイヤレス通信機能と融合することで、新しい体験が生まれるとして、AtomによりそうしたMIDが実現されると述べた。そしてMIDの登場は、日本のモバイル・インターネットをさらに加速させると述べて、ネットの進化と機器など環境の進化が、互いに相乗効果をもたらして発展していくという見方を示した。
実際に、各社で開発中のAtom搭載MIDのうち、WiFiに加えてWiMAXを搭載したり、3G携帯電話通信機能を搭載する端末が8割以上に上るというデータを示し、Atom搭載MIDでは多彩なワイヤレス通信が提供されるとした。
Atomの詳細について解説した、同社 インテル技術部長の土岐英秋氏は、Atomの特徴を「高性能と低消費電力の両立」あると述べた。PC用のCPUが、1%の性能向上で3%の消費電力増を招いているのに対して、Atomでは1%の性能向上が1%の消費電力増で済んでいるという。この高性能により、既存のMIDやPDAでよく利用される英ARM社のアーキテクチャーを採用したCPUと比べて、2倍程度の性能を発揮するとしている。
また、機器のバッテリー駆動時間を左右するアイドル時の消費電力を減らすために、CPUのパワーステイトを「C6」と呼ばれる状態まで下げる「Intel Deep Power Down Technology」を実装。通常動作時(C0)と比べて、消費電力は6%程度(100mW)まで低減できるという。
また同社では、MID向けLinux環境「Moblin Linux」を推進し、WindowsだけでなくLinuxベースのMIDの増加と、利用環境の促進を進める。その施策として、「利用モデル/アプリケーション・コンテスト」を、4月10日から開催する。コンテストでは、MIDの新しい利用シーン・利用形態を考える「利用モデル・アイデア部門」と、MID向けのMoblin LinuxおよびWindows用アプリケーションを募集する「アプリケーション/サービス部門」の2部門の募集を行なう。募集期間は10日から10月1日までで、7月と10月にコンテストサイト上で結果発表を行なう予定。
カーナビ型にディスプレー型、LOOX Uの新型まで?
Atom採用MIDが各社から出展
発表会には、メーカー各社が開発中のAtom採用MIDやUMPCの数々が参考出品されていた。
いち早くMID向けCPU「Intel A110」を搭載したUMPC「FMV BIBLO LOOX Uシリーズ」を投入した富士通(株)は、LOOX UのCentrino Atom対応版と思われるマシンを参考出品していた。詳細はまったく不明だが、A110に比べてパフォーマンスに優れたAtomを採用するだけに、快適なモバイルマシンとなりそうだ。
松下電器産業(株)は、3月に開発を表明していたAtom搭載版「TOUGHBOOK」を出品した(関連記事1)。ミニキーボード付きのピュアタブレット型で、側面には多数の拡張用ポートらしきものが並んでいる。サイズが大きいのでPDA的な手軽さはないが、実機を触ってみたくなるマシンだ。
そのほかに、クラリオン(株)や(株)東芝が、PDA風のMIDを参考出品していた。クラリオンのMIDは、説明のポップに512MBメモリー内蔵やストレージとしてSSDを内蔵するといった記述があるなど、具体的な商品化を前提とした試作品のように思われる。東芝のPDA型は、1月に米国で開かれたCES 2008にも出展されていたもので(関連記事2)、傾けて操作したり、独自のソフトウェアキーボードを備えるなど、操作系に凝った機能を備えている。
ほかにも日本電気(株)が、液晶ディスプレー型の情報端末にAtomを採用した機器を展示していた。Atomの低消費電力性能を生かしてファンレス化を実現。ファンの動作音が気になる、病院などのカウンター上の端末などの用途を想定しているとのことだ。