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インテル、携帯機器向け超低消費電力CPU「Intel Atomプロセッサー」を発表

2008年04月02日 18時05分更新

文● 編集部 小西利明

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 同日、東京都内にて開かれた新製品発表会では、インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏らにより、AtomおよびCentrino Atom プロセッサー・テクノロジーの紹介のほか、搭載機器の参考展示などが行なわれた。

インテル 吉田和正氏

左手でAtomプロセッサーを掲げる、インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏。指先ほどしかない小さなCPUなので、写真ではほとんど見えていない

 吉田氏はポケットに入るサイズのMIDが高速なワイヤレス通信機能と融合することで、新しい体験が生まれるとして、AtomによりそうしたMIDが実現されると述べた。そしてMIDの登場は、日本のモバイル・インターネットをさらに加速させると述べて、ネットの進化と機器など環境の進化が、互いに相乗効果をもたらして発展していくという見方を示した。

 実際に、各社で開発中のAtom搭載MIDのうち、WiFiに加えてWiMAXを搭載したり、3G携帯電話通信機能を搭載する端末が8割以上に上るというデータを示し、Atom搭載MIDでは多彩なワイヤレス通信が提供されるとした。

Atomを搭載するMIDのイメージ

Atomを搭載するMIDのイメージ。多くが大きめのPDAスタイルだが、もっと斬新な使用法やデザインをもった製品が登場してほしいものだ

 Atomの詳細について解説した、同社 インテル技術部長の土岐英秋氏は、Atomの特徴を「高性能と低消費電力の両立」あると述べた。PC用のCPUが、1%の性能向上で3%の消費電力増を招いているのに対して、Atomでは1%の性能向上が1%の消費電力増で済んでいるという。この高性能により、既存のMIDやPDAでよく利用される英ARM社のアーキテクチャーを採用したCPUと比べて、2倍程度の性能を発揮するとしている。

ARMコアのCPUとAtomの性能比較グラフ

ARMコアのCPUとAtomの性能比較グラフ。高いクロック周波数でも低い消費電力で動くAtomは、当然ながら処理性能で大きく上回る

インターネットアプリケーションを使用した際の互換性検証

ARMコアのCPU搭載環境とAtomを比較した、インターネットアプリケーションを使用した際の互換性検証のグラフ。WindowsやPC用Linuxが動くx86 CPUの利点を生かして、PCとの高い互換性を備える

 また、機器のバッテリー駆動時間を左右するアイドル時の消費電力を減らすために、CPUのパワーステイトを「C6」と呼ばれる状態まで下げる「Intel Deep Power Down Technology」を実装。通常動作時(C0)と比べて、消費電力は6%程度(100mW)まで低減できるという。

電力消費削減の効果を示すグラフ

「Deep Power Down Technology」による電力消費削減の効果を示すグラフ。右端がC6ステイト時。コアクロック停止のほかキャッシュメモリーへの電力供給も止めるので、通常動作時と比べて非常に低い電力しか消費しない

 また同社では、MID向けLinux環境「Moblin Linux」を推進し、WindowsだけでなくLinuxベースのMIDの増加と、利用環境の促進を進める。その施策として、「利用モデル/アプリケーション・コンテスト」を、4月10日から開催する。コンテストでは、MIDの新しい利用シーン・利用形態を考える「利用モデル・アイデア部門」と、MID向けのMoblin LinuxおよびWindows用アプリケーションを募集する「アプリケーション/サービス部門」の2部門の募集を行なう。募集期間は10日から10月1日までで、7月と10月にコンテストサイト上で結果発表を行なう予定。

Moblin LinuxベースのCentrino Atom対応マシンの開発環境

Moblin LinuxベースのCentrino Atom対応マシンの開発環境。ウェブブラウザー上でGoogle Mapを軽快に動かすデモを披露した

将来のMID用CPUについても言及された

ごく簡単にではあるが、将来のMID用CPUについても言及された。製造プロセスは45nmのままだが、アイドル時の消費電力をAtomの10分の1に抑えて、携帯電話機にも搭載できるレベルの低消費電力性能を目指す


カーナビ型にディスプレー型、LOOX Uの新型まで?
Atom採用MIDが各社から出展


 発表会には、メーカー各社が開発中のAtom採用MIDやUMPCの数々が参考出品されていた。

富士通が参考出品した、Centrino Atom対応LOOX U型UMPC

富士通が参考出品した、Centrino Atom対応LOOX U型UMPC。色が黒いためか、既存のLOOX Uシリーズより精悍な印象を受ける

 いち早くMID向けCPU「Intel A110」を搭載したUMPC「FMV BIBLO LOOX Uシリーズ」を投入した富士通(株)は、LOOX UのCentrino Atom対応版と思われるマシンを参考出品していた。詳細はまったく不明だが、A110に比べてパフォーマンスに優れたAtomを採用するだけに、快適なモバイルマシンとなりそうだ。

 松下電器産業(株)は、3月に開発を表明していたAtom搭載版「TOUGHBOOK」を出品した(関連記事1)。ミニキーボード付きのピュアタブレット型で、側面には多数の拡張用ポートらしきものが並んでいる。サイズが大きいのでPDA的な手軽さはないが、実機を触ってみたくなるマシンだ。

Atom版「TOUGHBOOK」

松下電器産業のAtom版「TOUGHBOOK」。見てとおりピュアタブレット型となっている

厚みはかなりある

片手で持てるサイズだが、厚みはかなりある。いかにもヘビーデューティーな作り

 そのほかに、クラリオン(株)や(株)東芝が、PDA風のMIDを参考出品していた。クラリオンのMIDは、説明のポップに512MBメモリー内蔵やストレージとしてSSDを内蔵するといった記述があるなど、具体的な商品化を前提とした試作品のように思われる。東芝のPDA型は、1月に米国で開かれたCES 2008にも出展されていたもので(関連記事2)、傾けて操作したり、独自のソフトウェアキーボードを備えるなど、操作系に凝った機能を備えている。

クラリオンの車載用途を想定したMID

クラリオンの車載用途を想定したMID。WiMAXや3G系の通信機能を備える予定

東芝のMIDは操作系が独特

東芝のMIDはデザインだけでなく、操作系が独特な点が特徴

 ほかにも日本電気(株)が、液晶ディスプレー型の情報端末にAtomを採用した機器を展示していた。Atomの低消費電力性能を生かしてファンレス化を実現。ファンの動作音が気になる、病院などのカウンター上の端末などの用途を想定しているとのことだ。

NECの液晶ディスプレー型Atom端末

NECの液晶ディスプレー型Atom端末。MIDではないが、Atomの低消費電力性能を生かしたファンレスの端末となっている

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