バリアングルにせず、薄型という選択肢もあった
── 視野率の低下を気にするユーザーもいるようですが。
山本 これはバランスの問題になってくると思うんです。カメラを大きくしてスペースをもっと使えば、視野率を確保しながらライブビューを実現できます。でもあまりに大きくなると、今度は見た目や携帯性に支障が出てしまう。視野率を高くするか、カメラが大型化するのを抑えるか、時間をかけて検討を行ないました。
漆戸 ファインダーの性能を求めるとペンタ部がどんどん巨大化していくんです。サイズ、重量など、いろいろなファクターを考えながら、一番満足できるポイントを探った結果が、今回の製品になりますね。
── バリアングルディスプレーは、個人的に「よくぞ、やってくれた」という感じです。ハイアングルに構えて下からのぞいて撮る際にちょっと角度が足りない……気もしますが。
山本 実はこれも議論があったんですよね。一方に(可動の自由度を高め)縦位置での撮影にも対応すべきなんじゃないかというものがあり、もう一方には「強度」や「コスト」などとの兼ね合いがありました。その結論として、可動二軸のバリアングルを選択しました。
漆戸 可動させないという案もあったんです。高視野角なパネルを使用して、そのぶん本体を薄く作ったほうが喜ばれるんじゃないかと。でも、(ライブビューのカメラだと言うと)自然にデザイナーがディスプレーが動くものをスケッチしてくるんです(笑)。こんな風に開発当初はいろいろなスタディーをやっていました。
佐渡 例えばお母さんが赤ちゃんを撮影するとき、一眼レフカメラだと顔がカメラで隠れてしまいます。その状態で、迫られると今まで笑っていた赤ちゃんの表情がこわばってしまう。それは大人でもそうですよね。カメラを低い位置に構え、コミュニケーションをとりながらフェイス・トゥ・フェイスで撮影できるといいなと考えました。相手と話しながら、チラ見して撮っちゃおうというのがコンセプトです。
そう考えたとき、液晶ディスプレーが固定式ではつらい部分があります。目線が被写体ではなくて、ディスプレーのほうに釘付けになってしまいますから。可動式にしたのはそういう理由ですね。
漆戸 佐渡のまとめてきたケーススタディーの中に「子供の表情をいきいき」というのがありました。そのとき、それを実現するためにはバリアングルだろうと思ったんです。
佐渡 ボディーをもっと小さくしようと狙っていた時期もありました。しかし、小さくしすぎると、今度は電池を収納するスペースが減り、撮影枚数を確保できなくなる。グリップのフィーリングなども含め、総合的に考慮して今の大きさになりました。
回路の改善で、同じCCDでもノイズを低減
── ネーミングに関しては、下位モデルがα200、その上がα350ですが、なぜこの数字になったんでしょうか? ひょっとしてα700の半分ってことですか?
佐渡 いいえ(笑)。実は海外向けにα300という機種(ライブビュー搭載の10.2メガ機)を発売しているんです。地域によってスペックの好みなどを考慮しながら発売機種を取捨選択しています。日本の場合は高スペックなものが好まれる傾向が強いので、α350とα200の2機種としています。(ネーミングの考え方としては)α100の後継でライブビューを搭載していないモデルが200番台、ライブビューを搭載したモデルが300番台、画素数のより多い方を+50としました。
── 国内ではエントリーにα200とα350があり、その上に中級機のα700がありますが、撮像素子の画素数だけで比較するとα350が一番高解像度になりますね。
漆戸 エントリークラスのユーザーに対して分かりやすく高画質をアピールするにはやはり画素数だろうと思いました。中級機種では、もっと別の部分──例えば高感度時のノイズの少なさなどを重視されるお客さんの割合が増えてきますが、調査の結果でもエントリー層の方は「画素数」を重視する声が多かった。そこで、今回は従来よりも画素数の多いCCDで作ろうと考えました。
── α700の「Exmor」(撮像素子内でA/D変換まで行なうCMOSイメージセンサー)ではなく、両機種ともCCDを採用していますね。
漆戸 これは設計開始の時点でベストなものをチョイスした形になりますね。CMOSには読み出し速度や省電力性、長時間の通電でも発熱しづらいといったメリットがありますが、一方で価格が割高になります。
同じ撮像素子でも周辺回路の改善でノイズは減らせる
── α200に関しては、α100と同じCCDですか?
漆戸 はい。α350のみ新開発のCCDです。
── α200の感度も最大ISO 3200に上がっていますが。
中山 α700に迫る「ノイズレベルの少なさ」はアピールしたい部分ですね。ノイズと解像感のバランスは異なりますが、α100に比べればノイズは格段に改善されていると思います。CMOSにはオンチップカラムA/D変換(を搭載したExmor)のように、高速読み出し可能で、素性のいいものがあります。しかし、一般的なCCDでも周辺技術の進歩・改良により品質と価格のバランスを保つことができました。
── 記事にも書きました(関連記事)が、α100からの進化ポイントのひとつにオートホワイトバランス(AWB)の精度が挙げられると思うんです。タングステン光源やカラーフィルターを組み合わせたライブ会場でも非常にバランスのいい仕上がりで安心して使えました。
中山 その記事は読ませていただきました。ありがとうございます。実際はα700から搭載しているのと同じ仕組みなんですが、ようやくこの部分を評価してもらえたな、と。ホワイトバランスに関しては、見た目の印象と仕上がりが一致するように努力しています。
── タングステン光源下で印象に合った色を再現するのは難しいことだと思います。でも、身の回りで雰囲気のある居酒屋とか、ホテルのロビーとか間接照明が使われている場所は多いですよね。AWB時にはどの程度の色温度まで対応されていますか?
中山 タングステン光源を含む照明下のAWBは重要視しています。こういった照明はヨーロッパなどでは多いですから。 AWB時の色温度を2000K台までは対応しないことで、赤みを残すようにしています。