高画素化と連写バッファ容量のアップ、デジタルズーム機能強化と内部強化にとどまるモデルチェンジのため、操作感はS8000fdと変わりなく、極太鏡胴やグリップなどの持ちやすさ、27mm相当という広角からの望遠ズームなどはかなり使いやすい。画質に関しても、広角時の周辺描写や最大望遠での解像感の低下はややあるものの、大径レンズのおかげもあって広角から望遠まで画質の劣化は少ない。この種のデジタルカメラの主な用途である、運動会での子供撮りなどホームユースには十分だろう。
新機能である「ねらい撮りズーム」と「ズームアップ3枚撮り」は、確かに使ってみても面白い。もちろん、実際には光学レンズを広角側にシフトしてそこからデジタルズームして切り出しているだけなので、パソコンでフォトレタッチソフトを使っている人ならば、自分で最初からやや広角で撮っておき、パソコンに取り込んでからトリミングしても同じじゃないの? と思いがちだが、カメラ側だけの簡単な操作で従来より一段と撮りやすくなる(あるいは撮影効果が得られる)という発想が面白い。
1年やそこらで新モデルが登場し、なおかつ高画素化するのが当たり前のデジカメ業界だが、1000万画素時代になっても実のところは高画素数を生かしきれていなかったように見受けられる製品も少なくない。高画素であれば、ある程度トリミングしても印刷やウェブページ(ブログ)への掲載に十分な画素が残ることから、これまでよりデジタルズームを使いやすくするという方向性は確かにアリだろう。特に顔検出機能との組み合わせにより、広角で撮っていても人物のアップを自動的に撮れるというのは便利だ。もちろんこの機能に限って見れば光学18倍ズームという超望遠レンズは必要ないのだが、本機のような広角レンズであれば活用できるシーンが広がるのは確かだ。
しかも、高画素な撮像素子と顔検出、デジタルズームの組み合わせがあれば、光学レンズは広角固定のままでも人物に向けさえすれば、カメラを人物に合わせてフレーミングすることなく人物をアップで撮れることになる。いまどきのデジカメは露出やホワイトバランスなどの自動化が進んできたが、もはやフレーミングすらも自動化され、シャッターチャンスにしても“スマイルシャッター”(富士フイルムではあまり注力していないようだが)の登場によってカメラがレリーズタイミングを判断してくれることになる。自動化によって、撮影に関する多くのことが撮影者の手から離れるということは、“カメラマニア”にとっては少し寂しい進化かもしれないが、デジタルカメラの、いやカメラ全体の歴史から見ても極めて大きなターニングポイントにさしかかろうとしている、と言えるのではなかろうか。
FinePix S8100fdの主なスペック | |
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製品名 | FinePix S8100fd |
撮像素子 | 1/2.3インチ有効1000万画素CCD |
レンズ | 光学18倍ズーム、f=4.7~84.2mm(35mmフィルムカメラ換算時:27~486mm相当)、F2.8~4.5 |
静止画撮影 | 最大3648×2736ドット |
ISO感度 | オート、ISO 64/100/200/400/800/1600、ISO 3200/6400(最大500万画素記録) |
動画撮影 | 640×480ドット、30fps、MotionJPEG圧縮AVI形式 |
液晶ディスプレー | 2.5インチTFT、約23万画素 |
記録メディア | 内蔵約58MBフラッシュメモリー&SDカード(SDHC対応)/xDピクチャーカード |
インターフェース | USB、AV出力、DC入力(ACアダプター別売) |
電源 | 単3形電池×4本 |
撮影可能枚数 | 約300枚(アルカリ乾電池使用時)、約500枚(ニッケル水素充電池) |
本体サイズ | 幅111.3×奥行き79.3×高さ78.2mm |
重さ | 約405g(本体のみ)/約500g(装備重量) |