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「過度に保守的な対応」に警鐘、金融庁が日本版SOX法に対する“11の誤解”を発表

2008年03月18日 23時25分更新

文● アスキービジネス編集部

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「実務の現場では、一部に過度に保守的な対応が行なわれている」――。いわゆる日本版SOX法の実施を目前に控えた3月11日、金融庁は内部統制報告制度に関するQ&A集を発表した。誤解が多い制度の意図を改めて説明するのが狙いという。その内容を一部紹介するとともに、内部統制に詳しい公認会計士の広川敬祐氏に解説をしてもらった。


誤解解消狙い、追加Q&Aや相談窓口の開設も検討へ


金融庁のWebサイトに公表された「11の誤解」
金融庁のWebサイトに公表された「11の誤解」

 金融庁が3月11日発表したのは、「内部統制報告制度に関する11の誤解」と題したA4版12ページからなる文書。今年4月にスタートする金融商品取引法の内部統制報告制度(いわゆる「日本版SOX法」「J-SOX」)の意図を「改めて説明するのが狙い」(金融庁)という。

 11の誤解は、1問1答形式で「誤解」と「実際」を挙げ、簡潔な解説を行なっている。たとえば、Q1では「米国SOX法と同じか」という質問に対して、「米国におけるSOX法に対する批判を踏まえて、制度を設計」と回答。米国SOX法との具体的な違いとして、「トップダウン型のリスクアプローチ(=重大な虚偽記載につながるリスクに着目)」、「内部統制の不備の区分の簡素化」を説明している。

 そのほかの主な内容は下記のとおり(「A」に関しては編集部が一部を抜粋・編集したものを掲載した)。

Q:「特別な文書化が必要か」
A:企業の作成・仕様している記録等を適宜、利用可能。必ずしも3点セット(業務フロー、業務記述書、リスクコントロールマトリクス)の作成は求めていない。
Q:「すべての業務に内部統制が必要か」
A:全社的な内部統制が最重要。重要な虚偽記載につながるリスクを勘案して、評価対象となる業務プロセスの絞り込みが可能。
Q:「問題があると罰則等の対象になるのか」
A:内部統制に問題(重要な欠陥)があっても、それだけでは上場廃止や罰則の対象にはならない。
Q:「期末のシステム変更等は延期が必要か」
A:予定を変更せずそのまま実施してかまわない。「やむを得ない事情」によるものとして評価範囲から除外できる。


 金融庁が今回の文書を公表した背景には、日本版SOX法をめぐるさまざまな誤解が、企業の実務担当者の間に浸透していることが挙げられる。同庁は発表文の中で、「過度のコスト負担をかけることなく、効率性と有効性のバランスをとりながら整備することを目指している」と制度の意義を強調。「実務の現場では、一部に過度に保守的な対応が行われている」と警鐘を鳴らしている。

 11の誤解は、金融庁のWebサイトからダウンロードが可能。同庁では今後も、一般企業や監査法人に対してヒアリングを行ない、追加のQ&Aを公表することも検討している。また、日本経団連や日本公認会計士協会と連携して共同の相談・紹介窓口を設置し、企業側の相談にも応じていく方針。さらに、制度導入後にレビューを行ない、必要に応じて評価・監査の基準や実施基準の見直しも検討するとしている。


【特別寄稿】
誤解は11で済まない、
周りに翻弄されず納得のいく内部統制を

――公認会計士・HBS代表 広川敬祐氏


 金融庁から「内部統制報告制度に関する11の誤解」が公表された。このような文書が公表されること自体、各企業の現場で異常な状況にあることが推察される。

 さらに、併せて公表された「(別紙2)内部統制報告制度の円滑な実施に向けた対応」では、今後も追加的なQ&Aを行なうことが述べられており、誤解は11では済まないのは明白である。なぜこのような状況になってしまったのか、3つの視点を挙げ、考えてみたい。


【1】事例を求める気質


 日本版SOX法は上場企業に一斉に法制化が求めたものであるから、前例となる事例がない。かろうじてあるのが米国SOX法の事例だ。しかし、米国のSOX法と日本版SOX法は異なる点も多い。

 にも関わらず、多くの企業は何か事例はないものかと米国SOX法の事例を参考にしようとする。そうした横並び主義の日本的気質が誤解を増長させている。


【2】日本版SOX法で変わったことは「経営者評価・報告」


 上場企業は上場審査時に内部統制を構築しているはずであり、財務諸表監査でも内部統制に依拠しているものである。法制化のホシは、経営者が自社の内部統制を評価して報告することにある。監査人に「ああだこうだ」と言われる前に、筋の通った経営者評価を実施することに注力しておきたい。


【3】「11の誤解」を誤解として議論する輩の登場


 このような文書が出ると、この誤解に対してブログ等で反論していく輩が多く出てくる。それでまた誤解が誤解を呼ぶ。この悪循環の構図がずっと存在している。とにもかくにも、周りに翻弄されず、自社の内部統制を納得の行くように構築・評価をしていくことが求められている。

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