次にサンノゼにオフィスを開くのは誰?
グーグルでのパーティーの後、今回のツアーの協賛でもある「JETRO」(ジェトロ、独立行政法人日本貿易振興機構)のオフィスを訪問するために、一行はサンノゼ市へと向かった。
JETRO BIC(Business Innovation Center)と呼ばれる同オフィスでは、米国市場進出を手伝うUS Market Access CenterのCEO、チャック・エリクソン氏が組織の概要や「マーケット調査」や「戦略コンサルティング」、「米国オフィスの提供」など同組織が提供するサービスを紹介した。
未踏ツアー参加者の関心をもっとも強く惹いたのが、JETRO BIC施設内に用意されたオフィス貸しのサービス。米国進出を臨むベンチャー向けに12のオフィススペースが用意されており、最大2年間にわたって賃料も含めて面倒を見てくれる。
間もなくLunascape(株)の近藤秀和社長が10番目の入居者としてやってくる予定だが、そうなると未踏関係者が入居者の4割近くを占めることになる(ほかにウタゴエ(株)、(株)サルガッソー、ソフトイーサ(株)の代理店を務めるぷらっとホーム(株))。JETRO BICの眺めもよく、日本と比べると広々としたオフィスのため、真剣に入居を検討する未踏参加者も何人かいたようだ。
初出時、社名の一部表記が誤っておりました。訂正してお詫び申し上げます。(2008年3月18日)
コンピューター・ヒストリー・ミュージアムで大団円
未踏メンバーが、最後に訪れたのは、コンピューター好きにはたまらないコンピューター・ヒストリー・ミュージアム(CHM)のガイド付きツアーと懇親会だ。
館内を案内をしてくれたのは、ボランティアのスタッフで、よほどコンピューターが好きなのか、そろばんや計算尺での計算方法の違いだけでも数分にわたって懇切丁寧に説明してくれる。米国で最初のパソコンとされている「ENIAC」にたどりつくだけでも十数分を要した。
一行に取ってさらに嬉しいのは、ボランティアスタッフの解説の後に、日本のパソコンの歴史を見守ってきた古川享氏が、裏話や日本での状況、自分がどう関わったかなどの細かな解説を加えてくれること。ひとつひとつ、あまりにも丁寧に見ていたため、最後のパソコンコーナーをじっくり見る間がなくなってしまった。
ツアーの後にはプロジェクトマネージャーのウィルアム斉藤氏による締めの挨拶が待っていた。斉藤氏は今回のツアーの内容に非常に満足していると語り、自分もかなり以前、コムデックスで合った古川氏に厳しい指導を受けた思い出などを振り返り、ツアー参加者に成功する上で大事な7つのポイントを伝える。
- あきらめないこと
- ネットワークを大事にすること
- 幸運を手に入れること
- タイミングをものにすること
- いいチームを手に入れること
- いいサポートを手に入れること
- フェアに勝負すること
懇親会では、ツアーを通してお世話になった古川団長と斉藤副団長、そしてIPAの方々にツアー参加者からプレゼントが贈呈された。プレゼントを受けた古川氏は、「4日間の経験を通してツアー参加者が大きく成長したこと」を評価。自分らの役割は「触媒」だと語り、その触媒を利用して、今後、ますます活躍して行けるようにとエールを送った。
彼らがこの4日間で経た経験が、海外進出を目指す日本の他のベンチャーにとっても有意義であったことを期待したい。ツアー参加者の一部は18日、IPAに集まって報告会を開く。
筆者紹介─林信行
フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。「MACPOWER」「MacPeople」のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフトの公式サイトで執筆中の連載「Apple's Eye」で有名。自身のブログ「nobilog2」も更新中。近著に「スティーブ・ジョブズ ー偉大なるクリエイティブディレクターの軌跡」(アスキー刊)、「iPhoneショック」(日経BP刊)、「アップルコンフィデンシャル2.5J」(アスペクト刊)、「ブログ・オン・ビジネス」(日経BP刊)など。