手軽に広角を楽しめる1台
外観はFX33やFX30とほとんど変わらず、重量が従来の132gから125gへとわずかに軽くなったとはいえ操作感覚はほとんど変わっていない。LUMIXシリーズに共通するスライド式の電源スイッチはプッシュボタンの長押しよりも小気味よく電源をON/OFFできる。撮影/再生モードがスライドスイッチになったことも、単に再生モードにしやすくなっただけではなく、撮った画像を確認してから撮影モードに戻すときにも、モードダイヤルのポジションをそのままにできるのはかなり便利だ。
なんといっても楽しいのは25mmの広角レンズだろう。28mmよりもさらに広角レンズを持つデジカメはいくつかあるものの、ポケットに入るコンパクト機としてはコダックの「Kodak EasyShare V705」(販売終了、関連記事4)といった特殊なモデルを除いてはほとんど存在しない。電源を入れて液晶ディスプレーに表示される広角画像を見るだけでもかなり新鮮だ。広角側28mmのコンパクト機もそれほど珍しくなくなったものの、25mmとなると実際に撮った結果を見てもかなりの画角の広さを実感できる。広角による遠近感の強調といった細かい撮影技法はさておいても、普段の街中スナップで“より広い風景を画面に収められる”という点でもかなり重宝するはずだ。
撮影画像に関しても、広角レンズゆえの歪みや周辺部の画質低下がやや見られるものの、広角レンズ搭載のコンパクト機としてはかなりきっちりとした画像となっている。等倍表示(トリミングした撮影サンプル)を見てみると低感度域でも若干画像がざらつき気味で、くっきり感を出すために標準設定でもシャープネス処理が比較的強めになっていると思われるが、リサイズなどの処理であまり気にならなくなる程度だろう。今回の画像処理エンジンの強化点のひとつが“暗部ノイズの低減”だが、ISO 800までならかなりノイズは抑えられて自然に見える絵作りとなっており、光学的手ぶれ補正もあってフラッシュなしのポートレート撮影には十分実用的だ。もっとも、ISO 1600以上となるとかなりノイズが見られて、被写体のディテールが失われてしまう。今回搭載した高感度モードでは画素数を下げる(最高300万画素相当で記録)ことでノイズ低減を図っているのだが、実際に撮ってみると細部描写がかなり甘くなってしまうのが残念なところだ。
最近のデジカメでは“顔検出機能”がすっかりおなじみとなり、自動シーン認識が次のトレンドになりそうな気配である。確かに誰でもシャッターを切っただけで人物なり風景なりがきちんと撮れるというのは大きな進歩ではあるが、従来モデルを単に高画素化や電子的機能強化を行なったモデル、というだけでは物足りない印象があるのも確かだ。本機ではボディーサイズやデザインはほぼそのままで(さらにFX33からFX35という控えめな名称変更もあって)、一見するとあまり工夫のない後継機という印象を受けるが、その強力な広角レンズは他の製品では得られない撮影結果や使い勝手を提供してくれる。最近のデジカメにはさまざまな機能が盛り込まれてきているが、最も重要なのはやはりレンズであり、新開発のレンズを意欲的に盛り込んだ本機と同社の姿勢は高く評価できる。
LUMIX DMC-FX35の主なスペック | |
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製品名 | DMC-FX35 |
撮像素子 | 1/2.33インチ有効1010万(総1070万)画素CCD |
レンズ | 光学4倍ズーム、f=4.4~17.6mm(35mmフィルムカメラ換算時:25~100mm)、F2.8~5.6 |
静止画撮影 | 最大3648×2736ドット |
ISO感度 | オート、ISO 100/200/400/800/1600、インテリジェントISO感度(ISO 1600~6400/300万画素相当記録) |
動画撮影 | 1280×720ドット、30fps、MotionJPEG圧縮QuickTime形式 |
液晶ディスプレー | 2.5インチTFT、約23万画素 |
記録メディア | 内蔵約50MBフラッシュメモリー&SDカード(SDHC対応)、MMC |
インターフェース | USB、AV出力(コンポーネント出力対応)、DC入力(ACアダプター別売) |
電源 | 専用リチウムイオン充電池 |
撮影可能枚数 | 約290枚 |
本体サイズ | 幅約94.7×奥行き22.0×高さ51.9mm |
重さ | 約125g(本体のみ)/約146g(装備重量) |