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シリコンバレーで起業してはいけない──LUNARRの高須賀氏がそう語る意味

2008年03月18日 21時30分更新

文● 編集部

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コンサバな経営を引きずっているのは米国も同じ


── 米国と日本では経営のやり方も違うのでしょうか。

高須賀 先日ウォール・ストリート・ジャーナルの記者と「次世代の経営」について話しました。彼はアメリカもコンサバな経営を引きずっている面があると言うんです。

 「経営手法の古さ」という点でお互いが感じていたことのひとつに、依然として「時間当たりの効率の良さを求める経営」をやっているというものがありました。例えば「1時間で鉛筆を何本作れたからすごい」といったものです。

 今までは人、モノ、金というリソースをどうやって確保するかが、ビジネスの成功に直結していました。しかし、こういった旧来の考え方をそのまま代入していくやり方がさまざまなミスマッチやストレスを生んでいます。これは社員も経営者も感じていることですが、現実的に実践できているところは少ない。


── もう少し具体的にお話いただけますか? 

高須賀 組織マネージメントやリソースアロケーションなど、いろいろな側面があるのですが、ビジネスは基本的に「コンセプト」があって「戦略」があって、それを「実行」していくフェーズに分かれています。

 コンセプトとは目標設定で、戦略とはそのゴールにどう向かっていけばいいかを決めること、実行とはそのために実際に動くことです。

 従来の経営では、すごくリアリティーのある部分、例えば「工場を作りましょう」「そこにいくら資金を投下しましょう」──つまり実行のフェーズにリソースの大半が投下されてきました。お金にしても、頭脳にしても。

 昔は、モノとお金がなかなか手に入れられなかったから、それを手にした人の事業成功確率が非常に高く、ビジネスの成功に直結していた。だからそれで良かったんです。

 しかし、今は「流通」や「物流」に革命が起きた。アメリカでは、資本家がたくさんいて、お金を集めるのも容易になっている。つまり、いままで手に入れにくかった「事業のリソース」は誰でも手に入れられるものになったんです。だから、それだけでは成功に直結しない。

 高度成長期の日本では「実行」の部分を一生懸命やってきた。僕らより10歳ぐらい年齢が上の層は「戦略」を中心に考えている。しかし、大本のコンセプトの部分は手付かずなんです。どんなに賢い人間が考えた戦略でも、優れたコンセプトの前には一撃で拭き飛ばされてしまうことを認識しないといけません。サイボウズだって、巨大なNotesをやっつけることができたんですから。


── コンセプトに進めない理由はなんでしょうか。

高須賀 できているもののほうが見えやすいし、算数で解きやすいんです。コンセプトは、ロジックでハンドリングしにくい面もあります。

 かといって科学できないかというとそうではない。不確実性が高いが、神様しかできない話ではないんです。こういう不確実性の高いものをどうハンドリングするのかが次世代の経営になってくると思います。

 不確実性にはいくつかの種類がある。一番簡単なのは、ビジネスがリニアに伸びていくものです。例えば、薄型テレビが来年、再来年どのぐらい売れるかは結構予測しやすい。

 次に分岐する未来がある。これは確率論で対処できる。算数の範疇です。だんだん応用問題になってきますが、3つ目が「多分こっちだろう」というベクトル的な未来。これは算数だけでは解けない。

 最後はどっちの方向に行くのか、まったく分からない世界ですが、これを事業としてやるのはありえない。ビジネスじゃなくて博打ですから。そういう経営者もいますが。

 僕が注目しているのは3つ目です。ここはベンチャーとか大企業の新規事業に最適な領域です。1つ目と2つ目はコンサルティング会社がハンドリングできる領域で、大企業が強い領域とも言える。パワーゲームでやられてしまうので、ベンチャーとしては不利です。それぞれの領域でハンドリングの方法も変わってきます。

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