目標はJBLの「EVEREST DD66000」
最初に試作したのはスピーカーだった。RCAの「LC-1A」にならって国内で独自に開発した2ウェイの同軸ユニットに、ドロンコーンとスーパーウーファーを組み合わせた3ウェイのフロア型スピーカーが試聴室には置かれている。ユニットはコーンの表面に大きなサブコーンを設けた独特な形状で、製品化の際にはダイヤモンドツィーターの使用を検討しているという。
「僕のイメージは300万円の商品が持っている能力を100万円で出したいというものです。これは100万のものを30万でやるよりは実現しやすく、できなくはないと思っています」
このスピーカーは、JBLのトップエンドモデルで、現行スピーカー製品の最高峰としての評価も高い「Project EVEREST DD66000」(1本315万円)を目標にしているということだ。特に重視しているのは低域の再生能力だ。
「試作しているスピーカーのユニットは通常で45Hzまでですが、ドロンコーンを追加するとそれより10Hz低い35Hzぐらいまで出るようになります。しかし、それでは足りない。27.5Hzが絶対いるとみんなが言うわけです。どうしてかというと、ピアノの一番低い音の周波数が27.5Hzだから。パイプオルガンではさらに低い16Hzです。それを出せるようにしたい。絶対手抜きはしたくないと思ったんです」
スピーカーの名称に関しては「街の名前」にし、そのイメージにあった特徴を持たせていこうと考えている。
「ハママツ(浜松)は、ピアノの一番下の音が出るモデルです。ライプツィヒはバッハがオルガンを弾いていた町。2ウェイだけのコンパクトな製品は室内楽用だからザルツブルグって名前にしようかなぁと。今のところ7モデルを考えていて、ちょっとずつ改善を加えながら、納得できるものだけを出すという、頑固な職人気質でやっていこうと考えています」