日本レコード協会と関係があることを示すだけ?
── 勘違いされるケースと言われますと?
津田 パソコン向けでも、ケータイ向けでも、インターネットには、音楽をダウンロードできるサイトが数多くあります。合法なサービスだけを取ってみても、複数のメジャーレーベルが参加している大手だけでなく、アーティストやインディーズレーベルが自主的に販売している小規模なサイトだって存在するんです。
そうした小規模なサイトでは、音楽制作や配信にまつわる管理業務だけで手一杯で、エルマークの存在を知らない可能性がある。また、知っててもわざわざ付けないという選択をするかもしれない。エルマークを取得するための申請に手間や時間がかかれば、それだけで「面倒くさい」とあきらめてしまうことだってあります。
また、特に小さな画面で見るケータイサイトでは、合法であることをユーザーに意識させつつ、既存のデザインとどう折り合いをつけていくのかということもポイントになるでしょう。
── 効果は出そうですかね?
津田 エルマークの登場や今後の運用によって、ネット上にある音楽配信サービスが、はっきりと善悪に二分できるなら効果は大きいと思いますが、現実はなかなかそうは行かない。
日本レコード協会の発表によれば、国内の音楽配信事業者は120社程度で、今回エルマークの運用開始とともに表示を始めたのは98社。大手のiTunes Storeをはじめ、残りの20社強は合法サイトであってもエルマークは表示されません。もっと小規模なインディーズの配信サイトや、海外のサービスなども含めると「エルマーク」というスキームにどれだけ乗ってくるのかは疑問が残ります。
結局、このマークはサイトが合法であるということを示すというより、「日本レコード協会に何らかの関係、もしくは契約があることを示す」という意味合いしか現時点ではないんですよね。
世界中にアーティストや作詞/作曲家はたくさんいるわけですが、その中で非常に限定されたものだけ「許諾されているよ」と示すというのがこのマークの本質で、今後もそれは変わらないでしょう。
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