このページの本文へ

SaaSか社内設置型で提供形態を選択できる――マイクロソフト、Dynamics CRM 4.0を発表

2008年02月29日 20時53分更新

文● アスキービジネス編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

マイクロソフトは、2月29日、SaaS型の提供形態を可能にしたCRMアプリケーション「Microsoft Dynamics CRM 4.0」を3月3日より販売開始すると発表した。


社内設置型とホスティング型の選択をユーザーが判断


 マイクロソフトが提供を開始する「Dynamics CRM 4.0」は、2006年9月に発売された「Dynamics CRM 3.0」に、60以上の新機能を加えたCRMアプリケーション。CRMの機能強化として顧客とのメールのやり取りを営業活動歴として保存し、顧客属性ごとに最適な格納を行なう「メールの自動マッチング機能」や、外部のデータソースをDynamics CRMの管理情報項目に自動的にマッチングして、整理する「外部インポート機能」などが挙げられる。

Microsoft Dynamics CRM 4.0の画面(画面クリックで拡大)

Microsoft Dynamics CRM 4.0の画面(画面クリックで拡大)

 Dynamics CRM 4.0が以前のバージョンと最も大きく変更した点はその提供形態。Dynamics CRMを導入する企業は、専用サーバを社内に置く「社内設置型」だけでなく、新たにインターネット環境で利用する「ホスティング型」を選択できるようになった。マイクロソフト 業務執行役員 マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 統括本部長 御代茂樹氏は「幅広い顧客ニーズを満たすためには、導入コストが安く、導入期間が短い上に、ユーザーのメンテナンスの負担がほとんどかからないホスティング型の提供形態が必要だと感じた」と述べる。

マイクロソフト 業務執行役員 マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 統括本部長 御代茂樹氏

マイクロソフト 業務執行役員 マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 統括本部長 御代茂樹氏

マイクロソフト 業務執行役員 マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 統括本部長 御代茂樹氏

 しかも、ユーザーはホスティング型でDynamics CRM 4.0を導入した後に、いつでも社内設置型のシステムに変更できる。ホスティング型を利用したときにカスタマイズした部分は社内設置型にそのまま引き継ぐことができ、再開発の必要はない。したがって、ユーザーはホスティング型でDynamics CRMを導入し、検討した後に社内設置型に変更できる。御代氏は「社内設置型とホスティング型のメリットを顧客が判断し、自社のビジネス戦略にふさわしいほうを導入してもらえば良い」と述べる。

 マイクロソフトはDynamics CRM 4.0をSIerやコンサルタント会社、リセラーといったパートナー企業を通じて販売を行なう。今回、ホスティングモデルで製品を提供する際には、データセンターを提供するホスティングプラットフォーム業者や、アウトソーシングサービスを提供するBPO企業も新たに販売パートナーとして加わる。

Dynamics CRM 4.0の販売パートナーのイメージ図(画面クリックで拡大)

Dynamics CRM 4.0の販売パートナーのイメージ図(画面クリックで拡大)

 ホスティング型のBPOサービスの提供開始時期は2008年夏を予定されている。具体的な製品で言えば、企業情報サービス会社のダンアンドブラッドストリートTSRはDynamics CRMをベースとした取引先データの管理・活用ソリューション「D&B Market Integrator」をホスティングモデルで販売していく。ダンアンドブラッドストリートTSR 代表取締役社長 兼 CEO 近藤恵理子氏は「ホスティング型でサービスを提供することで、大企業だけでなく中堅中小企業もターゲットにできる。今後1~2年で100社への導入を目指す」と意気込みを語る。

ダンアンドブラッドストリートTSR 代表取締役社長 兼 CEO 近藤恵理子氏

ダンアンドブラッドストリートTSR 代表取締役社長 兼 CEO 近藤恵理子氏

ダンアンドブラッドストリートTSR 代表取締役社長 兼 CEO 近藤恵理子氏

 今回、ダンアンドブラッドストリートTSR以外にBPOを提供するパートナー企業として発表されたのは、名刺データ化アウトソーシングサービスを手がける「三三」、テレマーケティング企業の「イノベーション」と「マーケティングウェア」の4社。


新たに変更された販売ライセンス体系


 また、Dynamics CRM 4.0ではライセンス体系が一新された。これまで、Dynamics CRMそのもののサーバライセンスを購入し、利用ユーザー数に応じてCAL(クライアント・アクセス・ライセンス)を購入する形式だった。しかし、これだと3交代で24時間稼働するコールセンターのような現場では、1台のPCしか使っていないにもかかわらず3つのCALが必要になってしまう。そこで、Dynamics CRM 4.0からは「Device CAL」と呼ばれる、ユーザー単位ではなく、利用端末単位で課金するライセンス形式を導入した。また、顧客情報の入力など一部機能を制限した「Limited CAL」と呼ばれる、CALも用意した。これにより、CRMに直接関係のないバックオフィスなどの部署のユーザーでも同システム上の顧客情報を確認できるようになる。

 価格体系は、単一企業が利用するサーバライセンス「Professional Server」が13万300円からで、グループ関係企業を複数持つユーザー向けのサーバライセンス「Enterprise Server」は32万5700円からとなっている。CALは通常のUser CALと新たに登場したDevice CAL双方共に1CAL6万5100円から。Limited CALは1万9500円からとなっている。通常はサーバライセンスとCALをそれぞれ購入するが、サーバライセンスと5ユーザーまでのCALをセットにした小規模企業向けの「Workgroup Server」は、16万2800円から。なお、価格はすべて参考価格。

 ホスティングモデルの提供価格については、今後パートナー企業がサービス開始のタイミングで発表する。しかし、御代氏は「競合企業がSaaS型サービスを1ユーザー1万円前後で提供しているので、それを踏まえた価格決定を行なう。ただし、5年以上の長期にわたってDynamics CRMを使用するなら、社内設置型のほうが低コストになる」と目安を述べる。

 2008年3月にはKDDIとマイクロソフトが共同で提供を開始する予定のSaaSプラットフォームサービス「Business Port」がスタートする。御代氏は「他のSaaS型のサービスもあわせてご利用いただけば、ユーザーメリットは非常に大きい。Dynamics CRM 4.0はBusiness Portに提供していく」と発表した。

カテゴリートップへ