シンセ界のテルミンと言うべき存在
── ほかの機械とつなぐためのMIDI端子もいらないんですね。
コルグ MIDIに対する要望はあるんですが、これがMIDIコントローラーの脇に置かれて、入力のデバイスとしてとらえられてしまうと、わざわざ鍵盤をとったのに……という話になってしまいます。本体だけで「XYパッド」ならではの音を追求するというか、部分的なんだけどいいメロディーができたりとか、ちょっとした曲作りの楽しさのほうを重視しています。
── XYパッドならでは音作りとは?
コルグ パッドの横軸/縦軸に何をアサインし、何をやったら面白いか、その組み合わせを決めていくことがXYパッドの音作りですね。100種類のバリエーションが組み込まれていますが、横軸は音程の変化になっているものが多く、縦軸には音色変化とか音量といったシンセのパラメーターがアサインされています。LFOとかカットオフとか、エコーの音をもう一度モジュレーションしたりとか……。なかには内部パラメーラーの複雑な組み合わせで鳴っている音もいくつかあります。なので、XYパッドの弾き方によってはわれわれも気付いていないような、いろいろな音が生まれたりするんですよね。
── この操作性はテルミンに通じるものがあります。
コルグ そうですね。でも、テルミンのように単純に指の動きを音に変えるだけでは、とても弾きにくい楽器になってしまうんです。SEみたいにシューっとなめるんならいいんでしょうが、ドレミファソ……という音を狙って出すのは難しい。かっこいいフレーズを弾くには、自分の耳を鍛えるしかない。
今回KAOSSILATORがここまで受けた理由のひとつは、段階的に指の動きを読み取ることで、カンタンに音楽理論にあったスケール(音階)で音を出せるところにあると思います。ジャズとか日本民謡風とか、スケールさえ合ってれば、なんとなく楽しめるんです。それでも既存の曲を弾こうとするとちょっと難しい面はあるんですが。
ちなみにテルミンぽい音は(プログラムの)3番ですね。スケール機能をオフにして、親指と人差し指をつまむようにして「W」を描くように動かすと、よりテルミンらしく聞こえますよ(ここで実演)。
── ほんとうだ!(拍手) 従来のシンセに比べると、壊れているというかクレージーな音が多いですよね。ハウリングみたいな音とか。
コルグ 60番の音ですね。あの音は、本当にハウリングと同じメカニズムで発生させています。パッドの上部を押さえ続けるとゆっくりとハウリングが起きてくるんですよね。この音のように最初は「インパクトのある音を多く載せよう」という考えはありました。ただ、壊す方向ばかりだと、「当たり前の音がない」ということになるので、開発の途中からはノーマルな音を重視するようにしました。