月刊アスキー 2008年3月号掲載記事
東京・千代田区の千代田区立図書館は2007年11月26日、インターネットを活用した「千代田Web図書館」を始めた。このサービスは、電子図書をインターネット上で貸出・返却できるもので、公共図書館での導入は千代田区立図書館が初めて。同サービスの基幹部分といえるデジタル著作権管理システムを手掛けたのが、ソフト開発企業のiNEO(アイネオ)社だ。李宗潤・iNEO社長に電子図書の未来像などを聞いた。
―― 韓国での電子図書館の設立経緯を教えてください。
韓国では2000年に「図書館情報化推進総合計画」が開始されました。この国家プロジェクトは、質の高い情報を共有化し、知識の格差をなくすことが目的で、これを実現する手段として電子図書館の設立が進められました。2002年から韓国全土の公共図書館で本格的に導入され、現在では480カ所の公共図書館と大学の図書館などで利用されています。
―― 日本進出のきっかけは。
図書館が持つ公共インフラとしての機能を、より高めたいと思ったからです。日本は、図書館施設が整備されており、利用者も多い。加えて、インターネットも普及しています。しかし、図書館とネットが有機的につながっていないことに疑問を感じていました。ハイブリッド図書館は、図書館の所蔵点数が増えるだけでなく、外出が困難な方や平日以外でも気軽に利用できるなど利用者側のメリットが大きい仕組みです。図書館のサービスを充実させるためにも必要なソリューションだと考えています。
―― システム導入費用は、どれくらいかかりますか。
初年度が約1000万円で、次年度からはコンテンツを購入する費用が発生します。ただし、導入コストを低減させることも検討しています。現在、ASPで提供するサービスを開発しており、年内にはリリースする予定です。
電子図書とは?
WebサイトからダウンロードしたデータをパソコンやPDA(携帯情報端末)などで読むことができる出版物。データ形式はXMLやPDF、Flashなどがある。電子書籍やe-bookともいわれる。韓国の公共図書館や大学の図書館では、現在この電子図書と冊子体(紙の書籍)の2種類を貸し出すハイブリッド図書館が主流になっている。