A4用紙1枚の仕様書から始まった
── モバゲーの開発は、どういった経緯で始まりましたか?
川崎 DeNAは、1999年からネットオークションの「ビッダーズ」を手掛けていた会社でしたが、モバゲーを開発する時期には、「モバオク」「ポケットアフィリエイト」といったケータイ向け事業が大きくなっていました。
モバゲーのときは、モバイル事業部の部長などが、「アバター」(ユーザーの分身となるキャラクター)を使って、ゲームが遊べるコミュニティーサイトを作れば儲かりそう」という話を持ってきたところから企画が始まっています。
A4用紙1枚に「こんな機能が欲しい」とリストアップしてもらって、「どんなサービスにしようか」と既存サイトを巡回しながら開発していきました。
「居心地のよさ」を目指して
── モバゲーを開発するにあたって、何かテーマを考えましたか?
川崎 まず、モバゲーのビジネスモデルとしてアバター収入を重視していたので、ユーザーがアバターに価値を見い出してくれるようなサービスにしなければいけなかった。
そのためには、まずコミュニティー自体が居心地のいいところでないといけないと考えたんです。コミュニティーの気持ちのよさを一度味わって、そのサービスを使い続けたいと思ったら、自分を他人に見せるためにアバターを着飾らせて自己主張するだろうという狙いがありました。
それとモバゲーは、当初からリアルではなく、バーチャルの人間同士で交流することを念頭に置いて、サービスや機能、インターフェースなどを開発しています。
リアルな友達同士でコミュニケーションを取るためのサービスとして作ると、元々の顔を知っているので、あまりアバターを着飾らせにくい。やり過ぎると、ちょっとサムいヤツと思われる可能性もあります。
── 確かに、中高生ならそういう空気が出やすいかもしれません。
川崎 アバター収入を定着させるという目的を達成するためには、mixiのような、写真をプロフィールとしてアップロードし、リアルの知人同士で使うようなコミュニティーの作り方は向いていない。
だから、まったくリアルでお互い顔の知らない人がコミュニケーションできるような雰囲気を作るために、こまごまと調整しています。
ただし、完全にリアルを切り離しているわけではありません。ケータイのサービスなので、どうしても口コミで広がっていくという一面もあります。だからどこまでリアルを残すかというその辺のバランスを取るのが難しかったんです。
【コラム】モバゲーのビジネスモデル
モバゲーでは、サイト内で使える仮想通貨として「モバゴールド」(モバG)を用意している。ユーザーはモバGで、アバターの表情、衣服、アクセサリー、家具などを購入してアバターやその部屋をデコレーションすることが可能だ。
モバGは、入会時に500G、友人を紹介すると300G、モバゲー内の広告をクリックすると2G、スポンサーサイトに登録すると20G、着うたをダウンロードすると30Gといった具合に、モバゲー内で特定のアクションを取ると入手できる。
また、クレジットカードや電子マネーの「WebMoney」などで買える特別なアバター「プレミアムアバター」も用意。こちらは500〜5000円で販売しており、オマケでモバGが付いてくる。
アバターを着飾らせたいユーザーは、広告クリックやスポンサーサイトの登録などでモバGをためていくが、このユーザーの行為がモバゲー自体の広告収入にもつながっている。