いまは技術の過渡期、世代差が顕著に出る
佐々木 今は世代の差が出やすい時期なんです。例えば、ナナロク世代(1976年生まれ)と言われている30代のベンチャーの役員は「ケータイが苦手で、入力も下手だ」ったりするんです。それが20代になると最初のインターネット体験がケータイだったという人が増えてきます。彼らも会社に入ればパソコンを使うようになるんですが、それはあくまでも仕事で使うもので、プライベートなメールはケータイ、mixiもケータイといった形で、「ツールの使い分け」を行なっている。
先日1986年生まれの人たち(22歳前後)と話す機会がありました。ケータイ世代でもさらに若年層になってくると、最初のインターネット経験が「パケ放題だった」という人が増えてくる。つまり、公式サイトではなく、常時接続でケータイを使って勝手サイトを見続けるのが当たり前だという世代になるんです。ダイアルアップでmixiや2ちゃんねるのような使い方は難しい。同じようにパケ放題によって、ケータイを使ったn対nのコミュニティーが登場した。つまりケータイのWeb 2.0化が始まったわけですね。
技術はすでに整っている、必要なのは落とし込み
── 常に持ち運ぶケータイなら、リアルとの関連性がより強まるという考え方もできますね。
佐々木 ケータイによってライフログ化が進むという側面はあると思います。おサイフケータイのようなものはもちろんですが、iPhoneには加速度センサーが搭載されていてジョギングの履歴なんかが記録できたりもする。MITではNokiaのケータイ電話のBluetooth機能を利用して人間関係を分析する研究も行なっています。この人は聞き役に回ることが多い、あるいは人の話をさえぎって発言することが多いということまで調べて、上下関係を調べるといった試みも行なわれているそうです。
mixiはリアルの人間関係とバーチャルの人間関係のセットを作り始めた。これまでのCGM、例えば2ちゃんねるに人間関係は希薄でした。パソコン通信の時代にもオフ会といったことが広く行なわれていたけれど、それは限られた層のものだった。SNSの拡大によって本当の意味で「ネットとリアルの世界」が歩み寄ったんです。
ケータイはこれをさらに進めます。おサイフケータイで何を買ったか、GPSを使ってどこに行ったかなども分かる。これによりパーソナライズが進み、リコメンデーションが出てきて、ライフログの形へと進化していくわけです。
現在あるもの(製品や技術)でもこうした情報の収集は可能です。あとはそれをどうマイニングするのか、どうサービスに落とし込んでいくかというアプリケーション化の問題になってくると思います。