このページの本文へ

エンジニア進化論 第12回

第12回 はじめに“辞め時”を考えておくべき~出口戦略~

2008年02月08日 11時55分更新

文● 中山康照

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 自分たちが生きているIT業界が右肩上がりの時代であれば、周りの環境の変化に関して、それほど頓着する必要もなかったかもしれません。売上げや業界シェアといったものが非常に重要な指標となっていたように、ものごとの方向性はそれなりに単純であったと言えます。また、ある程度付和雷同的に仕事をしていても比較的報われてきたでしょう。

 ところが昨今オフショア開発が激化し、これまで国内エンジニアが携わってきた案件が次々アジア諸国などに流れていく中では、従来のような仕事のやり方では生き残れなくなる可能性があります。つまりIT業界においてエンジニアはこのまま現業を盲目的に行なっているだけであったり、自分の明確な意思を持たずにいるのでは、全体のパイが大きくならない状況の中、仕事の先細りが待っているだけというわけです。では個人(エンジニア)として、今後どのような戦略が必要なのでしょうか。

 著者は「仕事を始める段階で辞め時(ゴール)を決めておく」という考え方をする「出口戦略」を身に着けておくべきだと思います。この戦略は、個々のエンジニアのさまざまなフェーズごとの区切り、例えば今行なっている仕事を「どこまで続けるのか」「どの程度の成果を求めるのか」などゴール(出口)を予め決めておくということです。つまり「新しいスキルを獲得できる業務に携われている間は続け、最終的にはプロジェクトマネージャーになる」といった想定をします。

 この出口戦略の最大のポイントは“仕事のスタート段階から”出口を想定しておくということです。なぜなら、その方が仕事の成果に対して自覚的になれますし、ゴールまでの状況によって、辞めるか、それともその会社に居続けるかといったことを自分で評価できると考えます。これにより、キャリアを考える上でもっとも危険なダラダラと仕事を続けて転職の機を逸したり、よいタイミングではない(まだその会社でチャレンジできることがあるなど)にも関わらず慌てて転職してしまうといったミスを防げるでしょう。

 また、この出口戦略と同時に「自分のキャリアを単線にしない」ということも考えておくべきです。例えばIT業界においてオフショアが広まっているなど、世の中の時流は絶えず変化しています。1つの道にすべてを賭けすぎてしまうと、その道がトレンドでなくなることにより大きなピンチを迎えてしまうことになるからです。

 ただ、オフショアを例に取れば通常の受託開発のためのスキルに加え、海外のエンジニアと日本のオフィスを橋渡しできるブリッジ・エンジニアとしてなどのスキルも磨いておくことで、オフショアが市場を席巻しても生き残ることができます。こうした考えから、同じ会社に所属し続けることがマイナスであると判断する場合もあるかもしれません。また、自分をニッチに向かせたり、独自性を高めたりする上で有効な戦略も考えられるでしょう。

 出口戦略を意識するということは自分にとっての次のフェーズを常に考えておくことにつながります。何にどれぐらい自分のリソースを割くことが自分のキャリアに有効なのかを考える習慣を持っておく。それは精神衛生上もリスクの面からも、一エンジニアがこれからを生き抜くためにとても有効なはずです。

Illustration:Aiko Yamamoto

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ