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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第13回

世界に羽ばたく、日本のamadanaケータイ「N705i」

2008年02月01日 15時15分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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デザインの選択肢がない日本の家電


 amadanaケータイの魅力を語る前に、まずは日本の家電業界におけるamadanaブランドの位置付けを知っておきたい。

 日本は家電大国だ。高度成長期の技術革新から現在に至るまで、日本の製品は非常に高い次元でモノ作りが行なわれている。さまざまな家電メーカーがしのぎを削っているため、日本の家電は技術的なスタンダードとても高い。これからも省エネなど、日本の技術が世界で役立つだろうと考えている。

 しかし、そんな家電大国ニッポンであるにもかかわらず(もしくは家電大国ニッポンだからこそ)、不思議な点がある。それは、デザインの選択肢が少ないということだ。

 例えばファッション。普段着から高級既製服、オーダーメイドに至るまで、さまざまなデザインの洋服が異なる価格で売られている。あるいは自動車。大衆車から、フェラーリやランボルギーニといった超高級車まで、こちらもバリエーションが豊かだ。

 一方、家電のデザインは画一的で、ユーザーは機能や価格の差で選ぶしかない。安価な製品でも、ハイエンドモデルでも、見た目にそう大きく違いはなく、周囲の家具に調和するような家電が欲しくても、なかなか見つからなかった。

 また、同じメーカーでも、ジャンルが違えばデザインがバラバラなことがほとんどだ(三洋電機の「it's」シリーズなんて例外もあるが)。だから、家電も含めてインテリアを統一したいというニーズに応えられなかった。

 しかも、ファッションや車の高級ブランドといえば、自社でショップを展開しているケースが多い。一方で家電は、普及価格帯で満足できる人も、高級志向の人も、同じ量販店や街の電気屋さんに買いに行くのである。

 ここに異を唱えたのが、amadanaブランドだ。

 ユーザーに新たな選択肢を提案し、部屋にあるすべての家電をデザインしたい。その思いの延長に、今回のamadanaケータイが生まれた。ちなみにリアル・フリートは、表参道ヒルズを始め、期間店を含めて4店舗の直営店を展開している。



「引き算の総和」という作り方


 モノ作りにおけるアプローチも面白い。

 デザイン家電というと、単体で目立つモノを想像しがちだが、amadanaの製品はひとつひとつの主張はそこまで強くない。

 なくてはならないデザイン、なくてはならない機能から製品を作る。そして愛着の湧く、長く使ってもらえるモノに仕上げる。そうした手法を、リアル・フリートのクリエイティブ・ディレクターで、インテンショナリーズ代表の鄭秀和(ていしゅうわ)氏は、「引き算の総和」と呼ぶ。

 amadanaでは、最初に買ったユーザーをがっかりさせないために、あえてモデルチェンジをせずにひとつの製品を長く売るというポジションも取っているという。

 そんな業界における特殊な位置付けや、モノ作りの姿勢がamadanaというブランドを形成しているのだ。

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