最新パーツ性能チェック 第56回
【最新パーツ性能チェックVol.56】
デュアルGPUカード「Radeon HD 3870 X2」はCrossFireを超えられるか?
2008年01月28日 14時30分更新
気になる消費電力と発熱
搭載GPUが2つになるのだから、当然発熱や消費電力も上がることは想像に難くない。そこで「ワットチェッカー」を使いアイドル時と3D描画時のシステム全体の消費電力を、サーミスタ温度計を使って同様にGPU裏とメモリ(ヒートシンク)部分の発熱を比較してみた。
やはりHD 3870単体に較べ消費電力は格段に増加しているが、ピーク時の消費電力はHD 3870 CrossFire時よりも20W以上抑えられているのが印象的だ。メモリの低クロック化による消費電力抑制のほかに、電源回路が1つにまとまったことでパワー効率も改善されているためと推測できる。
しかし、発熱はかなり疑問の残る結果となった。このテストではHD 3870単体と比較したものだ。数値的には大差ないように思えるが、HD 3870 X2には同じ熱源体がもう1つあることを考えれば、かなりの熱であることは間違いない。基板裏面のメタルプレートもかなり熱くなるため、ケース内温度への影響も大きい。
だが、それより気になるのは動作中の排気温とファンノイズだ。同じサーミスタ温度計を排気口の後ろ約1cmの部分に固定して計測したところ、HD 3870 X2では52度以上の温風がかなり勢い良く吹き出す。ファンノイズも割と大きく、快適な環境かと問われれば言葉に詰まる。拡張スロットは潰れてしまうが、HD 3870のCrossFire状態の方がファンノイズははるかに小さく感じられる。
2+2や2+1はどうなる?
さて、今回の検証では運良く2枚のHD 3870 X2を揃えることができた。となれば、当然HD 3870 X2のCrossFire Xも試さねばなるまい! もちろん、HD 3870 X2とHD 3870単体を組み合わせた時の挙動も気になる。わざわざスパイダープラットフォームを用意したのはこのだめだったのだ!
しかし、サンプル版として今回入手したドライバにはどうやらHD 3870 X2のCrossFire Xは未実装らしく、Catalyst Control Center上でもCrossFireを有効にするためのチェックマークは出現しなかった。
ちなみに、電力はキッチリと消費するようで、アイドル時256W、3D時は523Wも消費する。動作しないのに電力だけはキッチリ消費してくれるとは……。
HD 3870 X2とHD 3870単体の組み合わせも試したが、CrossFireの項目は出るものの、チェックボックスが表れなかったことも記しておこう。
性能はよいが快適度を考えると今一つ
HD 3870 X2は飛び抜けたパフォーマンスではないにせよ、一部のゲームを除けば高いパフォーマンスを発揮してくれる。ピーク性能面ではHD 3870 CrossFire環境の方が有利だが、拡張スロットがほとんど潰れないというメリットは非常に大きい。CrossFireではトラブってしまうゲームもすんなり動く、という互換性の高さも気に入った。「Crysis」や「LOST PLANET」といったNVIDIA製GPUに最適化されたゲームでの性能の悪さが気になるが、これはドライバの改善等でもうすこし改善されることを期待したい。
しかし、デュアルGPUゆえに起因するファンノイズの大きさと排気熱の高さは返す返すも残念だ。3スロット占有でもいいから、もう少し静かな高性能クーラーを装着して欲しいと思わないでもない。
と、このように性能面ではまあ満足できる(しかし、ダントツの性能ではないので完璧な満足とは到底言えない)が、熱いうるさいというデメリットのおかげで評価は今一つだ。今後はNVIDIAもDirectX10.1対応GPUで反撃することが予想されるが、確実にHD 3870 X2の性能を超えてくることはほぼ確実だろう。その時が到来した場合、HD 3870 X2のメリットは一体何になるのか……もしNVIDIAがシングルGPU路線を堅持すれば、消費電力面でも発熱面でもHD 3870 X2の立つ瀬はなくなる。それを回避するためにはAMDにもシングルGPUで真のハイエンドGPUに挑戦してもらうことが必須になる。HD 3000シリーズはコストパフォーマンスで優秀な製品だけに、今後はHD 3870 X2のような変化球ではなく、直球で新たな地平の開拓に挑戦して欲しいものだ。
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