「ケータイ全規制」の極論もあった
批判が続出する一方で、総務省にもフィルタリングの要請を出さざるを得ない状況があったようだ。
「総務省はこうした混乱を予想していなかったのか?」という中村氏の問いかけに対して、総務省の総合通信基盤局消費者行政課で課長補佐を務める岡村信悟氏は、今回の判断がなければ、もっと極端な方針が打ち出されたかもしれないと示唆した。
「この1年、青少年を守るための議論で、『携帯電話を持つこと自体がけしからん』という極論まで出てきている。親も一部の国会議員も、子供がどういう状況にあるのかなかなか想像できない。自分たちの価値判断では、なかなか今のスピードについていけない。様々な事件が起こっている中で、正直、『フィルタリングにすがっている』ということだと思う。
本来は教育であったり、これから何年かかけて築き上げていく環境が解決していくものかもしれないが、今のところ政府の中でも、今回の大臣要請という決断をしなければ、もっと極端なところに行ってしまうという思いがあった。このような混乱は出てくるということは、ある意味、大臣要請の『健全なコンテンツビジネスの展開の妨げとならないよう配慮しつつ』という言葉に表れているのだと思います」(岡村氏)
保護者や学校も戸惑っている
子供に接する保護者や学校も、新しいケータイ文化に戸惑っている。子供向けの参加型クリエイティブイベントを支援するNPO法人「CANVAS」で副理事長を務める石戸奈々子さんは、「親子コミュニケーションの間で解決できるのでは」と問いかける。
「そもそも子供とどういう風にコミュニケーションしていけばいいのかが分からない。子供達の世代で言うと、すでに『パソコンでもインターネットができるんだってね』と言うくらいにケータイから入るが、親の世代は小さいときにそうしたコミュニケーションのやり方をしていなかった。
何がよくて、何が悪くて、何をするとどんな危険が起こるのかというのがなかなか想像できない。『どう対話して、どういったルールを作ればいいのか分からないから誰か方針を作って』という親が多いように感じる」(石戸さん)
学校の教師はといえば、目下のトラブルの解決で手一杯のようだ。石戸さんは、新しいリテラシーを身につけて啓蒙活動に励む教師もいるが、「できればフタをしておきたいという人が多いのも事実」と語る。